四国・石鎚山  老之川(おいのかわ) 初芽成谷(ういがなるだに)

 

2000年11月3日〜4

パーティ:L丸尾、高木明、高木りう子、河野

記:丸尾 信

 

11月3日、曇

前夜、明石大橋を渡り徳島道へ入り途中の川之江市近くのPAで仮眠をとる。

その頃はまだ小雨が降り続いていた。今日は天気予報では晴れだが、出発す

る頃はまだ雲がどんよりと空にたれ込めている。

土居集落外れの廃屋先に車を駐車し朝食と準備をする。ここより少し戻り、

加茂川にかかる橋を渡り老之川林道に入る。林道からは白く泡立ち流れる老

之川が見られる。台風20号崩れの前線の影響で雨が降り続き増水している。

林道終点には廃屋と伐採中の材木搬出の索道施設がある。昨年10月末に老

之川雪瀑谷へ来た時は林道終点から入谷したが今日の水量では時間がかかり

そうなので山道を行き、導水管が見えてから谷へ降りる。昨年、滝の右を空

身で登り荷揚げした10m滝が谷の奥右に白い瀑布となって遠くに見える。

私はこの辺りより腰に痛みを感じ調子が良くない。天候も今にも降りそうな

気配だし、あまり沢泊まりの経験が無いKさんは水量が多くて無理なら石鎚山

の登山道に変更しても良いと言っているし、変更しょうかと言う気持ちになる。

しかし、日数はあるし中流からは登山道へのエスケープが出来そうなので無理

しないで行けるところまで行き判断することにする。10m滝に近づくには腰

まで水に浸からないと行けないし、今日は水量が多く登れそうも無いので、

導水管に沿いながら左岸を巻き、10m滝の少し上流に降りる。

このあたりは巨岩と3〜6mぐらいの滝があるが水量が多く2〜3mぐらいの

渡渉にも気合を入れないと流されそうになる。滝も水流際を登るとき瀑水に触

れると叩き落とされそうで緊張する。危ないと感じたところは空身でのぼり荷

揚げをする。

雪瀑谷出合に着く、正面に水量を二分する雪瀑谷、左に初芽成谷が深いゴルジュ

となり暗く見えている。速い流れを腰まで浸かり渡渉して初芽成谷の左岸より高

巻く、ゴルジュの奥には15mの滝が水煙を上げている。引き続き15m滝も左

岸を巻くが霧雨のような滝しぶきが降りかかる。この滝上からは水量が今までの

半分になり気分的に楽になる。しかし、巨岩や滝の高巻きの岩壁を空身で登り、

荷揚げしたりして緊張が連続する。10mから20mの滝が7つほどあるがどの

滝をどう越えたかはっきりしない。

右岸に高い岩壁があり大きな釜を持つ5m滝で15時20分を過ぎている。今夜

の泊まり場を見つけなくてはと思い始める。谷の上流を見ると10〜20mの白

く太い滝が2〜3見られこれを越えるには時間がかかりそうだ。谷中でも泊まれ

そうだが、増水が心配だ、天候も雨こそ降らないが雲の切れ目が無い。左岸の

安全な高台にツェルトを張り焚き火は谷中ですることにする。雨水を吸い込んだ

流木は中々火がつかなかったが燃え始めるとどんどん燃え盛ってくる。焚き火を

囲んでする食事は至福の時だ。焚き火の炎は変化がありいつまで見ていても飽き

ることがない。

 

11月4日、晴

今日は晴れそうだ。昨日よりも水量は5〜6cm少なくなっている。昨日見えた

滝群の15m、10m、20mの滝を越え成就へ上がる支流の出合に来る。ここ

には本流にかかる右滝と支流にかかる左滝がある。右滝10m滝は登れそうも無

く左滝の右岸を巻き本流へ降りる。続く15m滝上に出るとしばらく平流になり

一息つける。この後も10m以上の滝が4つあり高巻き懸垂で降りたり、滝の左

を登ったり、変化に富んでいる。U字状の美しいナメ滝200mが現れる。ナメ

滝最後の出口は傾斜が急で緊張する。ここまで来ると水量も少なく源流の雰囲気

になる。もう大きな滝はないと思っていたが、20m滝が出てくるこれは登れな

くて右岸より巻くが岩壁に阻まれ支尾根に上がりすぎる。はるか右下に谷が見え、

上流には登山道の小さな人が見える。ここから先は谷へ降りても3〜5mの滝と

ナメがあるだけで、この辺りの谷は石鎚山山頂付近からのゴミが多くなってきて

いる。地形図を見ると谷を行っても尾根の藪をこいでも時間的には変わらないの

で支尾根を行くことにする。(私は腰が痛いので早く尾根から登山道に出て下山

したかった。)胸あたりの笹の藪漕ぎであまり苦労しないで一ノ鎖場の上あたり

の登山道に出る。西日本最高峰の石鎚山(1982m)だけあって下山してくる登山

者は多い。カナダ、アメリカの人もいる。海外へよく出かけるKさんは気軽に

外人に話かけている。(私はさすがと感心する。)沢の装備をしまい紅葉を楽し

みながら登山道を下る。

ロープウェイ駅に着くと車の回収のことが気になりだす。車のところまで歩けば

2時間弱はかかりそうだ。駅の売店の人にタクシーはありますかと聞くとないと

言う。5時過ぎにバスの最終便がありますという事だ。ロープウェイに乗りバス

停に急ぐと売店の人が切符を買ってくださいと言う。その時、車の回収の話をす

るとそこまで車を出してくれるという。これ幸いにとお願いして歩くことなく車

を回収し、麓の温泉で汗を流し今回の沢登りを終える。

<コースタイム>

113日、老之川林道終点900−導水管925−雪瀑谷出合(標高500m1015-1030

休憩(標高680m)1155-1220−休憩(標高830m1315-1325−泊り場(標高960m)

1520

114日、泊り場(標高960m)805−成就谷出合850-900−休憩(標高1160m1015

-1025−休憩(標高1320m1145-1200−20m滝(支尾根取付)1310

一ノ鎖上部の登山道(標高1730m1410-1440−成就社1600-1610−ロープウェイ駅1630