三度目の雪山

 東山に登る当日、前日の予想に反して良い天気に恵まれた。自分自身にとっては三度目の雪山となる。

 山は山でも雪山は、私にとって特別思い入れが深い山の容(カタチ)である。雪はまだ降らないだろう、と勝手な見込みで登った山で、予期せぬ突然の雪と出逢ったのが一度目。とんでもない目に合った。と同時に、美しさに感動した。この感動をもっと安全に楽しみたい、というのが、山岳会に入ろうと思った最も大きな動機の一つである。

 入会後、季節はめぐり、労山会員としての一度目の冬がやっと訪れた。アイゼンボッカトレーニングを重ね、アイゼンの歯の少なからぬ部分が六甲の砂塵の一部と化した。あまりにも地味なトレーニングだが、感動の代償だと思えばしかたがない。自身二度目の雪山となった今年一月の武奈ヶ岳では、地味なトレーニングの甲斐あってか無事みんなについて行くことができた。ただしこの日は天候が悪く、雪山の美しさを堪能するのは次回への持ち越しとした。

 そして迎えた三度目の雪山。

 糸白見という部落の先から林道を進み、やがて林道から外れて急な斜面を這い登って東山へと続く尾根筋に向かう。他のパーティーは全く見かけない。トレースは、もちろん無い。雪が沈むところが増えてきたところでワカンを装着するが、かなりきつい斜面のおかげで、私達のパーティー七人の進むペースもかなりバラついている。

 ワカンへの体重のかけ方が下手なのか、前を歩く丸尾さんと比べると自分の足はかなり雪に沈んでいる。丸尾さんが沈まなかった箇所でも、その足跡に自分のワカンをそっと合わせてみると、やはりズブッ、と沈んでしまう。体重はさほど変わらないと思うのだが、ワカン歩行一つとってみてもやはり熟練が必要なようだ。

 おかげで、尾根筋にやっと辿り着いた頃には体力をかなり消耗していた。それなのに間近になった樹氷が視界に入ってくると、さらに上へ、という気にさせてくれる。いよいよここからが本当の雪景色だ。太陽が上がるにつれて日差しも強まると、サングラスを通した樹氷も影絵みたいに映ってくる。相変わらず雪にズブズブ沈みながらも、誰にも踏まれていない尾根筋を歩くのは新鮮だ。行く手に尾根を横切る足跡があると思ったら、ウサギの足跡だとのこと。前足と後ろ足とが規則正しく並んでいて、なかなか風情がある足跡をしている。自分のつけた足跡のなんと不揃いなことか、と少し反省しながら、ブナの樹氷に囲まれた東山の頂上にやっとの思いでたどり着いた。

 四方八方、視界を邪魔するものがない、というのは気持ちがいい。どちらを向いても白い山並みが連なっていると、標高は低いがかなりの壮観だ。だからこそ、もっと高い雪山に登りたい、という次への思いもさっそく湧いてくる。取れたての樹氷で喉をいやすと、頂上のブナ林の樹氷を何度か振り返りながら下山した。あまりの日差しに雪がゆるんだのか、行きよりもさらに足をとられながらの帰り道だった。

網倉