大山山行記

黒田

 

1.今回の大山山行に行くまでのこと

大山の山域は若い頃から好きな山域で、学生時代から20代の頃何回も訪れたところです。30年前(1970年当時)は大山弥山(1711m)から最高峰の剣が峰(1729m)に登頂東の尾根を経てユートピア小屋から元谷へ降りたりと縦走出来ていましたが、その後に崩落がひどくなり最近は剣が峰の稜線部分は立入禁止区域となっております。はたちの頃に大山を夏や秋に登頂したり縦走をし、冬には大山の廻り、蒜山や皆ヶ山、鏡ヶ成や桝水高原を歩き廻って、大山スキー場でスキーをして楽しんだものです。30年ぶりなつかしい思いをもって、今回は冬山積雪時の大山山頂への登山となりました。 昨年12月に神戸労山の冬山教室を受講し、冬山の装備も一通りは揃えました。1月末の比良武奈ヶ岳(雨と風雪を体験)、鳥取東山(ワカンを付け湿った悪雪に何度か膝まで沈み苦労し)と雪山登山を20〜30年ぶりに体験、今回は1泊2日分の食糧とテント泊の装備を持って初めての冬山登山となりました。20kg以上の荷物を背負っての登山、行動食や非常食は?飲物(酒類)は何を持って行こうか、行動中や雪山宿泊時の服装はどんなのがいるのか?あれもこれもと用意することになってしまい。団体装備に宿泊用寝具もあり荷物が増えて80リッターのザック満杯と冬用登山靴の袋と50リッター位の旅行用布バック1つの大荷物、泉川さんの車で行くので車の中へデポ出来るからと、余計な荷物が増えてしまった。今後は最低限必要な物と少し楽しめる物ぐらいとし、シンプルイズベスト 荷物の少量化軽量化に努めたいと思います。 

2.出発から登り始めるまでの様子

2002年3月8日(金)午後8時阪急御影駅前まで泉川さんが個人車で来てくれて ガソリンを満タンにして六甲トンネルを通り三谷さんの待つ神鉄道場駅へ、午後9時に道場で3人合流し神戸三田インターより中国道を西へ米子へ向かう。米子道の出口から一番近いサービスエリヤで仮眠しようということになり、出口の溝口IC手前の蒜山SAに23時20分到着し、明日の無事登頂を願って三谷さん持参のウイスキーでちょっと前祝いをして車内で24時ごろ就寝する。翌日の3月9日(土)朝6時過ぎに起床、7時SA内自販機でカップ麺購入お湯を注ぎ食する。暖かい物が寒い朝には何よりご馳走となる。そのほか持参したおにぎりやサンドイッチで朝食を取る。カップ麺の販売機より勝手にテルモスにお湯を入れる人がいる。黒田です。トイレをすませ 7時30分ごろ蒜山SA出発、溝口ICより桝水高原へ。この日は快晴の天気だったので米子道から大山の雄大な姿がきれいに見えていた。これからあの頂上まで登るんだな、すごく高いな雄大な景色だな、来てよかったなと思いました。大山寺への峠道では路上の雪が凍りアイスバーン状態。数台の車がタイヤチェーンを取付中であった。泉川さんの車はスタッドレスタイヤ装着車で徐行しながらもそのまま走行出来ました。8時頃に大山下山キャンプ場の駐車場に到着。車を駐車して大山山行の用意をし出発する。駐車料金は1日千円。暖房付きのきれいなトイレがあり快適に使用出来ますよ。

2.大山山行1泊2日 行動中の様子(その1)

3月9日(土)午前8時20分に大山登山口を出発する。朝は快晴のためか結構冷え込み登山道の下から雪は凍っておりワカンは不要と判断し車にデポし置いて来た。新雪の降った後すぐだとラッセルを強いられ登りコースタイム3時間半がラッセルで5時間も6時間もかかるとガイドブックに載っていた。今日はラッセルなしで行けそうだ。爽快な気分のなか歩き始める。2合目を過ぎ少し上りがきつくなりアイゼンを付ける。数組の登山パーティと一緒に歩く、遅いパーティは追抜かし早い人には抜かれながら黙々と歩く、地元らしき何人かの登山者に今日は山頂小屋が開いてるやろかと聞くが、閉まっているとか開いているか解らないとか、明確に開いていると言う人がいない。この段階ではリーダーの三谷さんの判断で山頂小屋付近でテントを張ろうということになっていた。天気は申し分のない快晴で雲一つない。北壁の谷側元谷の真ん中に元谷小屋がきれいに見える。でも頂上付近は風非常に強く雲が吹き上げられているのが下から見えている。今からあの中へ行くんだなと思う。よく見ると北壁の中心部の雪と岩の厳しい傾斜部を登る人影が見える。5人位かザイルで結んでいるのか?すこし登ったようだ。我々は歩き始めてから2時間弱10時10分に6合目避難小屋前に着く。コンクリート製の狭い小屋で6〜7人しか泊まれない位狭い小屋だ。ここから傾斜が急になり風が台風なみに強くなり吹き飛ばされそうになる。頂上から降りてきた人に山頂小屋は開いてましたか?と聞くが頂上は強風でそれどころでない、弥山の頂上に何とかタッチしてすぐ下山してきたとのこと。小屋は閉まっているようで強風でテントを張るのは無理ですよと言われました。三谷さんがとにかく頂上まで登ってから判断しよう。だめなら下へ降りて元谷小屋ででもテントを張ろうかと言われました。そのときは快晴の青空ですが山頂付近に行くほど風も非常に強く巻き上げる雲で視界も悪く、前のパーティの歩く速度が急に遅くなる。私は先頭で前の人のトレースをたどっていたのですがときどき強い風と視界の悪さで下を見過ぎてしまっているのか、つづら道のターンで真っ直ぐ行ってしまい、トレースがなくなりビックリして前の人のトレースを探して戻ったり、真すぐ傾斜を上がり過ぎてからトレースに戻り、不自然な動きが何回もありました。やはり冬山1年生なんですね。足元だけでなく、風が強く視界が悪くても少し先を見て、ルートを判断し歩くことが必要だと体験させられました。8合目位から傾斜は緩くなったが、風はますます強くブリザードのよう、冬山用に購入した黄色いヤッケが役だちました。視界の悪いなか竹に赤い布を付けた道しるべを確認しながら4本の柱が建つ(後から風力発電のプロペラ柱だと解るんですが)何で山の上にあんな柱があるの?4本杉?その向こうに50人が泊まれる位の大きな山小屋が半分以上雪に埋もれてうっすらと見えかくれしている。あそこまで行けばいいんだ。もう少しだ、それから30分位登行して11時20分に山頂小屋到着 調度3時間で登っており20kgの荷物を背負ってにしては良いペースで登頂出来た。山小屋の入口を探すと山頂小屋側面1階の入口が幸運にも開いており中に入れました。すでに20人位の人が強風を避けて避難され食事し休息していた。2階が空いていたので、我々は2階に上がり、窓側に陣取り荷物を下ろし休息。後からきたグループが2階横でコンロを炊き鍋物を始めた。ビールも飲んでいる。3.大山山行1泊2日 行動中の様子(その2)

3月9日(土)午後は大山頂上のブリザードのような強風も午前中だけで昼を過ぎるとおさまり、弥山(1711m)から見ると剣が峰(1729m)に向かう人影が見える単独行のようだ。そのうち剣が峰頂上付近に達し頂上部は雪庇があるのか、やや下側までで完行のようだ。若者二人がそれを見て同じように行こうとしたが途中から引き返して来た。かなり厳しい箇所がある。剣が峰への登行はよほどの熟練者で、的確な判断が出来ないと滑落する危険な行為だ。泉川さんが最近広島の有名な登山家が大山北壁を登行中に滑落し死亡したと話されました。我々の居る弥山山頂も場所によっては2〜3mそれると元谷まで滑落しそうだ。14時に山小屋2階にテント設営する。山小屋の中でテントを張るのが冬山では一番暖かいそうで、1階でも張っていた。黒田は登山のテント張ったことがなかったので今回いい勉強になりました。三谷さんが私の持って来た団体装備の雪スコを出してくれと言われ、何をするのかな?と思っていたら、大きなビニール袋に雪をいっぱい取って来た。コッヘルにテルモスの呼び水を入れ上から雪を乗せてコンロで熱する。溶けてお湯になった。雪は近々に降ったのか泉川さんによるときれいなおいしい水が出来たとのこと。坊垣さんから教えてもらった豚汁の作り方を三谷さんが実践し、事前に家で材料の野菜を細かく切って豚肉は味噌で混ぜてすぐ鍋に入れられる状態で持参、登行時は鍋と材料は黒田が担当で持って登った。山小屋の中は昼間だが寒く多分氷点下だ。でも暖かい豚汁の味噌味と日本酒の燗がうまい。飯もうまく炊けおかずも旨い。山の食事は最高だ。食事後休息し、夕刻外へ出るとかなりガスっていました。頂上付近の南壁の狭い鞍部に学生だろうか、テントを張っている。突風でテントが飛ばされそうだ。よく見ると横に雪洞を掘って入っている。6人位でうち2人が女性、山小屋にトイレをしに来る。目のくりくりしたチロル風帽子のよく似合う子だ。黒田さんちゃんとチェックしてるねと泉川さんが言う。泉川さんもチェックしてんのとちゃうの?暗くなりテントの中でめざしを焼いて日本酒を飲んだ。テントのなかでコンロを炊くとすごく暖かい。三谷さん5合黒田3合持って来た日本酒すべて飲む。1階の人は500mlドライの缶ビールを5〜6本持って来てる。私はビールが一番好きだけど重たいので今回持って来るのやめた。でもビールもおいしそうだ。我々は後に泉川さん持参の焼酎も飲んだ。私は焼酎はやや苦手だ。20時ごろ明日に備えて就寝。山小屋付近5パーティー15人が宿泊。翌日6時頃起床。外はガスっている。気温は昨日より高いようだ。朝食を作って食べる。テントの外に置いた500ccの牛乳のパックが凍っている。小屋内も氷点下のようだ。ホットミルクにして飲む。うまい。黒田さん山に牛乳を持って来る人はいませんと三谷さん。雪を温め紅茶を作ってテルモスに入れる。テント撤収これも勉強だ。8時15分山小屋出発。ガスって見えにくい。念のために私は細引5mm10メートルのザイルを用意する。ホワイトアウトになったとき三谷さんや泉川さんと結ぶためだ。黒田だけが行方不明とか滑落したら困るから。でも今回使わずにすんだ。黒田さんルートファイディングの勉強や先頭を行ってみと泉川さんが言う。視界5〜10mでも一部埋まった木道と竹に赤布の目印がかすかに見える先に降りた数人のトレースもある。私にも何とか先頭で行けそうだ。山の厳しさと危険性を少し味わう。山陰日本海の独立峰である大山は冬荒れると怖い山になる。雪が靴底に団子状態になり着く。靴の横をピッケルの先でコンコンたたくと取れるよ。三谷さんから教わる。急な斜面の悪雪を下って6合目避難小屋まで来るとガスも晴れ風もおさまる。記念写真を取り、かなり余ったレーション(行動食)を食べる。よく食べるねと泉川さん。北壁を眺めると急な斜面をトライするパーティが見える。別に元谷からユートピア小屋に向かう数人も見える。烏ヶ山方面か東尾根へ縦走するのかな?大山も剣が峰は立ち入り禁止だけどそれ以外はいろんなバリエーションルートがある。今度は元谷へ降りて迂回してでもいいので縦走したい。そんな思いで大山を下山。下りはコースタイム2時間を1時間半で下山して、9時45分に登山口に到着した。神戸労山に入会して初めての私の山頂1泊冬山体験登山もお陰で成功裏の内に無事終わりました。三谷さん泉川さん冬山のことを教えて頂きありがとう。これからもいろんな山を経験し自分で判断出来ることを増やし、山を楽しんで行きたい。

4.大山を下山してからのこと

3月10日(日)10時に留守宅本部の事務局長宅へ下山報告を電話で入れました。

出発前より調査しておいた、日帰り温泉4箇所のうちで、第1候補の大山淀江町の温泉施設 白鳳の里 ゆめ温泉へ向かう。10km車で20分の場所、入浴料700円です。 10時30分頃大山下山キャンプ場出発11時前に淀江町着、温泉へ入浴。露天風呂が気持ちいい。神戸労山では3分の1位の人が下山後入浴希望派らしい。真ん中の3分の1位が中立派入浴はどちらでもよく、後の3分の1の人は下山し前に風呂があっても入らず帰る非入浴派だそうだ。私はぜひ遠方まで行ったらなるべく地元の温泉に寄ってから帰りたいタイプで、仕事の出張でも着替えとシャンプーは持参し、水泳も好きなので水着も持って出張している。淀江ゆめ温泉風呂上がり温泉施設内のレストランで昼食を取る。行きしは泉川さんと三谷さんで運転してもらったし、山の先輩にいろいろ教えてもらったりお世話になったので帰りは私が運転することにしました。三谷さんと泉川さんは風呂上がりにおいしそうに生ビールを飲んでおられました。ビール好きの黒田は水だけ、でも日本百名水の一つ、天の真名井の水だそうで、おいしくてコップに何杯も水を飲みました。米子インターを12時30分に入り、蒜山SAに寄り中国道を経由し、15時45分頃に神戸大開の神戸労山の事務所到着、精算後解散しました。

(参考データ)

概算費用 高速料金 往復 約1万円 ガソリン代5千円 (往復500km)

     現地駐車代2千円(2日分) 団体食料費7千円 計2万4千円 1人8千円

     高速バス 片道4千5百円 JR 片道8千円程度(神戸−米子)

概算時間 交通時間 3〜4時間 神戸〜大山 高速道 中国道米子道利用

     山行登行 登山口〜大山(弥山1711m)頂上 3時間半 新雪時ラッセル別

     山行降行 2時間  天候視界とも良好時の平均コースタイムです