涸沢岳西尾根経由―涸沢岳

浜端

2月某日、ロッククライミングトレーニング中での会話、“どっか行きたいね”、“涸沢西尾根を登るのどう?”、“いいですね!行ったことのないコースやし”、“下山したら温泉に入って美味い酒!ううう…たまらんなー”、という訳で…。

河合さん、食料は、装備は、どっちがリーダーにしよか?・・etc。ワカンは要らんでしょう???(実は私は持っていない)。出来るだけ軽くしよう(ボッカは嫌い)。テントも超ウルトラライト(1人用?)にして、スコップ(雪洞)優先で。ザイルは要るかもしれんなー、切り売りの7mmφ30m持ってるよ。(とても軽いので気に入てる)久しぶりの穂高方面へのチャレンジである。(昨年正月は単独行で横尾尾根、散々な目に遭っている)

1+1=2じゃなく、数人力、勇気百倍、これまでの単独によるチャレンジでは踏み込めなかった領域に…。(わくわくするなー)

詳細が決まり、メールで計画書を提出し、3月20日昼すぎ大阪出発する。

午後7時半頃、新穂高温泉に到着。月あかりを頼りに蒲田川右俣林道を行く、途中、豪華別荘(穂高平非難小屋)で泊めていただくこととした。飛騨高山ビール*で前祝し、就寝。午後11時すぎ。

注*飛騨高山ビール:350mL、510円、高いが美味しい、生きた酵母が混じっている。製造時が一緒でも、飲む時期が1週間違うと、味が異なる。どこの酒屋でも置いてるわけでもない、ビールです。うう…うまい!

3月21日、寝心地がよすぎて6時半起床、雲一つない快晴、まっさらな雪面の林道を行く、ほどなく白出沢出合いに到着。奥穂高岳あたりに雪煙が見え、長野県側より飛騨沢側に強風(恐風?)が吹いてるのが観察され、しっかりと冬らしい天候(悪化)が約束されているようだ。涸沢岳西尾根に取付き、樹林帯の中を目印に導かれ、どんどん高度を稼ぐ、二人の背後には、錫杖、笠、抜戸、双六あたりまですべて見渡せ、すばらしい眺望であったが…。やってきました鉛色の空が!昼を待たずに、厳冬期の雰囲気が…。暴風雪の中、数時間高度を稼ぎ、2400m付近の樹林帯に予定どおり到着(もっと上に行けるんとちゃう?)。“今、午後2時頃か、もうひと踏ん張りやなー”で、スコップの威力で1時間、立派な穴蔵が出来あがりました。

豪華な食事も終わり、深夜、“トイレも作っとけばよかったな”ん”簡易トイレ作ろうか?“おやすみ…”。(作ったかどうかは秘密!)

3月22日、出入口をすっかり雪に覆われた状態の穴蔵からでて、視界は十分あるから登ろか?「行こう行こう」と言ったかどうかは風雪の中でかき消され、聞こえなかったが、2人の意気はぴったり(?)で当然のごとく、上を目指す(何とかと煙は…)。森林限界を抜け、雪稜をしばらく行き、蒲田富士のピークへ到着。(下山時はザイルいるかな?)

ふっと下を見ると、5人パーティーが目に入る。(うっそー、貸切やと思ったのに、ぶつぶつ…。ま、いっか、トレースはうちらが上までつけるんやし)

いよいよ本ルートのメイン箇所、滝谷側に発達した雪の造形(とても綺麗だが、踏み抜くと楽になる?)を左に見て、10mほど下の斜面をアンザイレンで進む。途中、雪の造形を滝谷側へ越える。(緊張のピークやな…)ほどなく、安定した広い台地にたどり着く。餌を食べ、水を飲み、背中を西風で押されるように岩稜に取り付き、それ以降、先ほどの後続パーティーは見えなくなり(むふふ…、やっぱり貸切や)、午前中に涸沢岳に到着。白いベール越しであるが、北穂、屏風の頭、北尾根から前穂、奥穂などなど、厳冬期の景色は格別!(感動…ありがたやありがたや)。

早々、白出のコルに下り、奥穂の避難小屋をあてにしたが、僅かに屋根の位置が判る程度(戸の位置がわからんがな…)で、あきらめ、またもやスコップの大活躍で、トイレ付きの穴蔵高級マンション製作。(あったかすぎて水が滴る欠陥住宅でもありましたが)

夕食時、大事件発生!ウイスキー落とした、あああ…。で、今日はおしまい。

3月23日、下山不可能、停滞。一日中ぶつぶつ…。数回、除雪の労働奉仕で本日おわり。

3月24日、早朝の天候はきのうと一緒、しかし、昨夜から、気圧が上がり、安定し始めている。視界も50〜100mほどはある状態が続いている。明日、晴天とは限らない、誰かの装備はたっぷりと水を含んだスポンジ状態、下りれば温泉、酒そして乾いた布団、僅かにゆるむ兆候を感じ取り、決断。(一発できめるでー)

午前6時すぎ下山開始。(風が強かったせいか思ったよりも積雪量はたいしたことないな)当然、アンザイレンで、森林限界の上部の雪稜下部までめざすことになる。そんでもって、例の雪の造形箇所が最も緊張することとなった(斜面は50cm以上積雪が増えている)。登はん時セットしたポール(武庫川で採取したヨシのようなもの)が心強い。他の箇所は主に岩陵を楽(?)に下る。途中、なんかの鳴き声がする方を見てみれば、ライチョウが数匹寄って来ている。応援してくれてる様で心がなごむ。なんだかんだと下山を数時間続けた結果、ようやくアンザイレンを解ける箇所にたどり着く。すこし下って、21日の雪洞箇所。出入口はすっかり雪で埋ってる。林道までのトレースの跡形もなく、下りもしっかり労働奉仕を強いられる。白出沢出合からの蒲田川右俣林道は、僅かにトレースの痕跡が残り、少し楽になる。しばらく歩いて、ようやく新穂高温泉到着。午後3時。

一言、“やっぱりワカンは要らんかったなー”。(ワカンなしは事実ですが、ワカンは場合により有効かもしれません、僕、ワカンない?さぶー!)

満足度:登り、下りとも、ほぼ100%我がパーティーでトレースをつけたので、星四つ。

基本的データー他、

行動時間:3/20 約2時間

3/21 約7時間

3/22 約6時間

3/23 ???

3/24 約9時間

軽量化の結果:浜端の場合、すべて含めて約18kg。

河合さんもおそらく20kgは超えなかったと推定される。

温泉での記録:温泉入浴回数 浜端 1回 河合 不明。

缶ビール6本 ビン1本 酒6本と食べきれない量の夕食。

起床時刻5時(なぜか早く起きてしまう。山家のさみしい習性?)

自己反省点:浜端 下山中こける。少しひざをいためる。(気を抜きすぎ。気の抜けたビールみたいやな…)

河合 聞いてません。

紛失品:ウイスキー1本、サングラス1つ