ヨーロッパアルプス報告

8月4日〜19日の日程で、当会の河合さんと私で2人です(河合さんは9月初めに帰国予定)。

ニュースでご存知のとおり、ヨーロッパでは大洪水に見舞われ大変な夏でありました。アルプスでも同様に、8月10日の夏真っ盛りの時期に、ツェルマット(標高約1600m)では何十年に一度あるかないかの降雪量があり、登山に関しては非常に悪い状況でありました。

成果については以下のとおりです。

5日:チューリッヒ空港着→ツェルマット入り

6日:ブライトホルン登頂(高度順応のため)。日帰りができるりっぱな4千メートル峰。ガス、地吹雪などで、ときおり視界が遮られ、あまりよくない。登頂をあきらめて下山するガイドパーティーもあったが、私は前年に経験があり、ルートも理解していたため登山を続行した。

クラインマッターホルン(ロープウエイの駅)より標高差約300mの登り、往復約4時間。

主要な装備は、アイゼン、ピッケル、アンザイレン用のザイル(隠れたクレバスに落ちないため、氷河上ではいかなる場所においてもアンザイレンで行動するのが基本であります)。

7日:休養日(それぞれ別の方面にハイキング)天候は晴れ。

8日:明日の好天を期待して、チナールロートホルンをアタックするため、ロートホルンヒュッテ入り(ツェルマットより標高差約1600m)。標準所要時間4時間30分。

こちらでは、1時間あたり標高差300m登るのが一般的。

午後1時頃、チナールロートホルンにアタックしたパーティー2組が下山してきたが雪が多くて状態が悪く、頂上付近の岩場は登れないとの情報が入り、気分が落ち込む。

午後3時頃、オーバーガーベルホルンの登頂に成功した3人パーティーが下山してきた。(本ルートの核心部は雪稜を行くルートであり、降雪があっても岩場ほど困難さは変わらないため登頂できたようだ)

9日:夜、降雪があったようで一面真っ白、ガスも発生し、視界が悪い。今日は断念する。

翌日の天気の回復を待って、小屋に連泊しようか迷ったが、これから2〜3日、最悪の天候になることが判明し、あきらめて下山。

ツェルマットに下山後、私の主要目的対象であるワイスホルン(Weisshorn:4506m)について、河合さんと協議した結果、今の2人の実力では登れる状況ではないことを納得してもらい、もうひとつの選択肢であるガイド登山(浜端のみ)でチャレンジすることで了解を得る。

早速、昨年オーバーガーベルホルンで一緒したガイド(信頼を得ている)に直接連絡を試み(昨年お世話になった現地の日本人の方にお願いした)、12日小屋入り、13日登山の予定で約束がとれる。気持ちが昂ぶる。好天を期待したい・・・。

夕方、マッターホルンは怪しい雲におおわれ、稲妻と共に空気を引き裂く轟音が聞こえ、嵐の中に入っているのが判る。ぞぞっとする。

10日:なな、なーんと!夏真っ盛りの時期に、ツェルマット(標高約1600m)では何十年に一度あるかないかの降雪があり。最悪!今日は一人で雪中ハイキングをした。気温4度。

11日:雪も止み、回復の兆しが感じられたので、ツェルマットより2駅ほど離れたランダの村まで行き、村よりワイスホルンヒュッテ手前(標高2600m付近)まで偵察を兼ねてハイキング。

12日:予定通り、小屋入りのため、ランダの村(約1400m)より−ワイスホルンヒュッテ(2932m)に入る。標準所要時間4時間30分のところ、3時間20分ほどで着いてしまう。(興奮しているのかな・・・。昨晩、気持ちが昂ぶって眠れんかったもんなー。)

正午過ぎ、小屋に電話が入る。山の状態が悪いため、ガイド登山をキャンセルしたいとの連絡・・・・。

ショック!私がツェルマットの町を出発した直後(20分後)ホテルに連絡した様だが・・・。

せっかく目前にある山に触らずに帰るなんて許せん!明日は、単独で途中まででも試登することにする。

13日:明るくなって、少しだけ登ってくると小屋の人に言って出発した。少し上にある氷河の台地を横断しなければならない。最も危険な行為であるが、充分認識した上での試登である。これまで3度のヨーロッパアルプスで培った経験と勘がたよりで行動し、何とか無事に横断する。

稜線より降りている岩稜の弱点に取り付き、岩稜左の雪面との境目をキープし高度を上げる。南側の山稜の向こうにマッターホルンの北壁が半分程望めるくらい高度を稼ぐが、ガイド登山を予定していたため、ザイルは携帯していない。常に下山ルートを意識しながらの試登になってしまった。今登っているルートは、下山には適さない。岩稜から左へ大きくそれた雪壁を一気に下ることを考えている。ただし、この雪壁は、午後になると上部から落下物(雪とか氷)の通り道になっている。赤い岩のスラブをいくつか越したあたりで、登ることは可能であるが、ここを登ってしまうと、下山ルートに考えている雪壁上部のバンドに出てしまい、窮地に陥る可能性があるため、試登はここまでとした。(おそらく標高3400mあたりと思われる)

雪壁を一気に下る。岩稜の最下部に着き、ほっとする。ここからはさきほど横断した氷河の台地が望めるが、私が横断したラインは見事にクレバスの間を通過していることが判った。(ちょっと自慢)

氷河の台地に降り、横断し、現在時刻が11時位であったので、この氷河を登り峠まで行き、さきほどの試登した上部の偵察を兼ねて、反対側の小ピークに登った。

偵察の結果、ガイドが登らない理由が判明した。現在のように雪がべっとりと付いている状態では、稜線に上がる直前のクロワール(標高差200m位)はあぶなすぎるようだ。本来ここには雪は付いていない(夏の写真)所で、これらの雪がすべて消滅するまではガイド登山は再開されないかもしれない。(稜線上で1ビバークし、早朝下降することはできる)

偵察の結果、状態が良ければ、プライベート登山で充分可能であることを確認できただけでも収穫と思いたい。

小屋に戻り、来年プライベートでチャレンジすると負け惜しみを小屋の人に言って、麓のランダの村に向かった。夕方、ツェルマットに戻る。

14日:マッターホルンの偵察(浜端)、シュワルッツゼーより雪の状態を観察。ガイド登山は、来週の火曜日(20日)まで登らないとの情報あり。

河合さんと今後の予定について協議の結果、明日小屋入りし、試登を実施し、16日もしくは17日にアタックすることで合意。

15日:別々に、ヘルンリヒュッテ入り、私が2時間ほど試登、その後2人で再度試登した結果、明日アタックすることに決定した。2度の試登で、早朝暗いうちにルートを間違えずに行けると考えられた。

16日:4時35分出発−12時登頂、やりました!登頂!

ヘルンリヒュッテに下山、午後9時半。頂上より半分近く懸垂下降しなければ降れないくらい悪かったため、下山に時間がかかってしまった。数多くのパーティーが1ビバークを強いられるなかで、我々を含む3パーティーが当日のうちに下山をしたことは、誇りに思っていいかもしれません!河合さん。

17日:ツェルマットに下山、午後帰国準備(浜端)

18日:(浜端)チューリッヒへ

19日:関空に帰国(夕方)

今回は、私にとって2度目のチャレンジであるワイスホルンでありましたが、昨年は手もつけずに終わってしまいましたが、今回は、条件が揃えばプライベートでも可能であることが判り、収穫がありました。(満足度 星3つ)

マッターホルンは、約4分の1世紀前となる1979年(私が28歳のとき)に、かみさんと2人で登りましたが、このときは山の状態がベストで、午前2時30分出発−8時登頂−夕方にはツェルマットに下山できたのですが、今回は苦労して登ったこともあり、うれしさもひとしおで、河合さんもとても感激されていました。(満足度 星5つ 満点です)

河合さんは、私がワイスホルンに行っているとき、単独でRimpfisch horn(4001m)西ピークに登頂(13日)されました。マッターホルンとともに感想など聞かせていただければうれしいのですが。

その後、河合さんの方は8月いっぱいこちらに居るようで、モンブランを登る予定にされています。9月3日には帰国されます。

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