敗退の山がまた一つ 福井 経ヶ岳 2002.12.28-30
L.北口 M坊垣
年末の25日、一旦は中止した山行が復活、急いでメンバーを募ったものの参加者は他に現れず、また十分なルートの検討も出来ないまま28日朝の出発となった。
経ヶ岳は福井県北部の白山山系につながる山域の末端に位置する、1625mの山で、麓には六呂師スキー場と勝山スキージャムの2つのスキー場がある。今回は当初の予定を変更して勝山スキージャムから入山することにした。1本目のリフトを降りてからはスキー場の端を黙々と歩く。スキー場を抜けるとワカンの世界、ところが先行者のトレースがある。「折角来たのに興ざめやな」と言いながらトレースをたどると、いくらも進まないうちに途切れてしまった。早々に引き返したらしい。膝上までのラッセル。前々日あたりからかなりの積雪があったようだ。「雪が深いから諦めたのかな、それにしても諦めが早すぎる・・・」でもこれは適切な判断だったのかも知れない、後になって思った。ここからは私達だけの山になる。この日は16:20まで行動し、細い尾根にテントを張った。
翌29日、いざ出発という時に北口さんの「ウッ」といううなり声、ザックを担ごうとして腰をひねったと言う。しばらく様子を見た後、歩いてみるということで恐る恐る出発、時折降る雪の中、ラッセルを交代しながら進む。夜のうちに積もった雪が重く、急斜面では腰近くのラッセルになる。
北口さんは今回、初めて使うという山ナビを持ってきていた。パソコンで地図上にポイントを設定し、それをナビに取り込めば、吹雪でもガスでも進めると言う。私はホントかな?と思う。時々ナビで現在地を確認しながら進んでいたが、途中からナビの示す地図上の地点と、実際の地形にズレがあるような気がし始めた。出発して6時間、小さなピークに立ったとき、やはりズレがあることが判明した。とすると、経ヶ岳のピークまでまだ3分の1ほど(実際は半分だった)しか来ていない、と言うことになる。どうするか・・・・・、予定のルートを歩き通すとすると、この雪なら予備日の31日いっぱいかかる可能性が大きい。いや、下手をするとそれ以上だ。北口さんの頭の中に奥さんの顔と大晦日のオシゴトが浮かんだらしい。やっぱりマズイ、腰も心配だし・・・・引き返すことにする。数時間前に付けたはずのトレースは、その大半が風と雪によってかき消されていた。
この夜は北口さんにとって辛いものになった。腰−ではなくて、湿雪に触れたノースフェイスのヤッケが水をたっぷり含んで、寒くて眠れず、シュラフの中で震えていたと言う。翌朝もまだじっとり、シュラフはビチャビチャ。昨シーズン購入した私のヤッケはサラサラ、快適。
最終日30日、朝から雲が上がり始め、スキー場の手前のピークに着いたときには深く青い空になった。昨日はほとんど見えなかった経ヶ岳が見える。昨日の到達点からもピークは遙か彼方。1日であれだけしか進めなかったと分かってがっくりすると同時に、何だか可笑しくなってきた。経ヶ岳からは赤兎山、三ノ峰、別山そして加賀白山へ、長大なそして魅力的な尾根が続いていた。東に目を転じれば奥美濃の山々、まだまだ登る山はある。今回の経が岳は惨敗だったけど、自分を取り囲んでいる山々を見ているうちに何だか幸せな気分になってきた。また来たらいいよね・・・と。
教訓1 雪を甘く見るな。後から考えてみるに、今回の積雪量からすると、とても甘い計画だった。人の入らない雪山では山行に関する資料は少なく、ラッセルも自分だけが頼り、十分な余裕が必要だ。それでもそんな雪山が私は大好き。
教訓2 最新の装備も正しく使わなければ混乱の元。いや、危険を呼び込むことだってあるかも知れない。。
教訓3 身につける装備のメンテナンスはしっかりと、それでもそろそろかなと思ったら潔く買い換えよう。
行動記録
12/28 9:00頃 神戸発
12:30 スキージャム勝山着
13:50 第1リフト終点 歩行開始
14:40 第2リフト終点着
14:55 発
15:30 スキー場上ワカン装着発
16:20 行動終了
12/29 7:20 出発
8:10 1,360mピーク着
10:00 休憩
10:15 出発
13:30 1,390mピーク着
14:10 引き返す
15:35 行動終了
12/30 7:20 出発
8:45 スキー場上着ワカンをはずす
10:15 ゲレンデ下着
13:15 温泉発
16:40 神戸着
記 坊垣