八ヶ岳連峰縦
記 森内和也
3週間前に行った山行(冬山教室終了山行1/17〜19:蓼科山登山口〜蓼科山〜大河原峠〜双子山〜双子池〜亀甲池〜北横岳〜ピラタスロープウェー山頂駅)の続きを行き、厳冬期の八ヶ岳連峰縦走にチャレンジした。一時的な悪天候はあったものの、比較的条件に恵まれ予定通り縦走することができた。【L浜端 尾崎 森内】
行動記録
2月7日(金)
三宮(21:30)〜諏訪SA(翌1:35)
2月8日(土)[晴後曇(夜に入り雪)]
起床(5:00)出発(5:50)〜ピラタスロープウェー山麓駅(6:45)
山麓駅(9:00発)〜[ロプウェー]〜山頂駅
山頂駅出発(9:20)〜雨池峠〜縞枯山(10:45)〜茶臼山〜大石峠〜麦草峠(11:45)〜白駒池〜(北ルート)〜高見石小屋(13:10)〜中山〜中山峠〜黒百合ヒュッテ(15:15)△
2月9日(日)[雪後晴]
起床(3:00)出発(6:15)〜中山峠〜東天狗(8:30)〜根石岳〜箕冠山〜夏沢峠(10:20)〜硫黄岳(12:00)〜硫黄岳山荘(12:40)△
2月10日(月)[晴]
起床(4:00)出発(6:30)〜横岳(7:10)〜赤岳展望荘(8:10)〜赤岳(9:00)〜行者小屋(10:10)〜美濃戸山荘(11:10)〜美濃戸口(12:00)
美濃戸口〜[タクシー]〜ピラタスロープウェー山麓駅〜諏訪SA〜自宅(20:30着)
今回の山行を前に、自分なりの希望および心構えとして次の2つを挙げていた。
?冬期山行の厳しさを経験する
昨年12月の入会以前から数えて5回程度冬山を経験していたが、いずれも天候等比較的条件が良い山行ばかりであったので、できるものなら今回可能な限り悪条件の冬山も経験してみたい。(悪条件下で行動できるかできないか、行動して良いものか悪いものか、やはり経験しておかないと今後の山行において自分自身で判断できないと考えたため)
?朝の出発時等に他のメンバーを長時間待たすことが無いようテキパキ行動する
冬期山行において体温の低下は致命傷となる。自らの行動の遅れが原因で、自分自身はさておき他のメンバーにまで危険を及ぼすことは極力避けなければならない。
元々マイペースな私は山行に限らず集団行動の際、他の方々に待ってもらうことが多々ありました。ミーティング時に尾崎さんから指摘を受け「これはいかん」と心に決めたのです。
2月8日(土) 6時45分にロープウェー山麓駅に到着したが、何と始発が9時00分であるとわかり一同呆然とした。下調べは念入りにするべきである。この日の日中は快晴。ロープウェーで高度を上げていくと周囲の山々が一望でき、気分が盛り上がってきた。9時20分行動開始。今回のコースは天狗岳〜硫黄岳間を除き、登山者が多くトレースが期待できるとのこと。また、ここ最近は雪が降っていない様子で3週間前と比べると下界の残雪がかなり少なくなっていた。(とは言うものの山頂駅付近は一面真っ白である。)坪庭付近のルートは雪が堅く、アイゼンで踏みしめるキュッキュッという音が印象的だった。初日でスタミナ充分、トレースもしっかりしていることから、この日は黒百合平まで行くことができた(15時15分着)。地図上のコースタイムで5時間35分のところを、休憩も含め5時間55分で行くとはよく頑張ったものである。トレースの有無でこんなに違うものなのかと実感した(前回トレースの無いルートでかなり時間を浪費した)。ヒュッテ横でテントを張り夕食を済ませ18時30分就寝。明日は3時00起床。事前の心構えを今一度自分に言い聞かせた。
2月9日(日) 真夜中、突然眼が覚めた。何者かが爆睡中の私の頭を後ろからゆっくりと押すのです。何事かと手で探るとずっしりとしたものがテントの隅一面を押しているのが分かりました。「あっ、雪や。それも相当の量の。」とピンときましたが、起床までまだまだ時間があったので、そのまま寝ることにしました。起床までの間テントの上から覆い被さってくる雪を払いのける作業を何回かやったような気がします。そうこうしている内に3時となりテントの外へ出て見ると、何とそこは踏み跡の無い真っ白な世界が・・。30cmは積もっただろうか?テント外に置いていたアイゼン等は雪に埋もれ全く見えなくなっていた。朝食等を済ませ5時には出発準備ができた。しかし、浜端さんがルートの状況を調べに行ったところ、ルートファインディングに時間がかかりそうなので明るくなるまで待った方が良いとのこと。ヒュッテ内で待機することにした。6時15分出発。今日は昨日のようにはいかないだろうと予想できた。案の定行く手は困難なものとなった。ガスのため視界は40〜50m、雪混じりの強風、膝までのラッセル。中山峠から先は左側が断崖絶壁となっているため、ルートを大幅に逸脱することは許されなかった。先頭はいつもの通り浜端さん。体力、判断力が要求されるなと経験の浅い私なりにそう思った。それにしても浜端さんはタフだ!前回・今回と2度同行させてもらったが、その体力には頭が下がる。私も見習うべく普段のトレーニングは欠かせないと思った。東天狗に到着したのは、8時30分。相変わらずの悪天候のため、天狗岳最高峰の西天狗行きは見送り、そのまま先へ進むこととなった。後で聞いた話だが、状況によっては引き返すことも考えていたらしい。それだけ天候条件が良くなかったということだろうが、私自身は防寒対策をきっちりしていたのが良かったのか、あるいは、ただ単に経験が不足しているだけなのか、意外にも余裕があり引き返すことなどこれっぽっちも頭に無かった。いずれにしても、良い経験をさせてもらった。箕冠山からルートを東へとり夏沢峠を目指す。この辺りから天候が回復し視界が開けてきた。その後、いつの間にか雲一つない快晴となった。一時的・局地的な悪天候だったのだろうか?悪条件の冬山を経験してみたいとは言え、やはり天気はいい方が良いに決まっている。やったーー!!目の前には壮大な岩壁がそびえ立っていた。硫黄岳の爆裂火口壁だ。頂上付近には強風のためか、もの凄いスピードで雪が舞い上がっていた。夏沢峠で休憩をとり硫黄岳へと向かった。山頂では360度の展望が広がり、行く手には横岳・赤岳・阿弥陀岳とごつごつした岩山が悠然とそびえており、心が洗われるようだった。ただ、風が非常に強く、耐風姿勢をとらないと飛ばされそうなほどだった。これも初めての経験となった。この日は硫黄岳を少し下った硫黄岳山荘横でのテント泊となった。
2月10日(月) 今日は八ヶ岳連峰の最高峰「赤岳(2899m)」にチャレンジするとあって、おのずと気合いが入る。6時30分出発。天気は快晴。まずは横岳に向かう。この辺りは岩稜帯が広がり、風のせいか残雪が比較的少ない。またトレースもしっかりしていることから歩きやすかった。ただし、ルート途中には何箇所か幅の狭い尾根道やクサリ場があり特に注意が必要であった。今回これまでのルートにおいては、天候に恵まれ周囲の景色は圧巻の極みであった。縦走コースで踏破してきた蓼科山、天狗岳、硫黄岳、これから向かう横岳、赤岳。遠くには北アルプス、御嶽山、中央アルプス、南アルプス、浅間山、谷川連峰・・・。ちょっと待てよ、何か足りない。それは・・・。7時10分、横岳到着。うわおー、とうとう姿を見ることができた。日本最高峰「富士山」。眼下に広がる雲海の中、真っ白で大きな円錐形が頭を出し朝焼けに輝いていた。自然と笑顔があふれ皆で握手し合った。休憩もそこそこに赤岳へと向かった。まだまだ気が抜けない。9時00分、赤岳山頂に到着。ようやく八ヶ岳連峰最高峰まで到達した。何かを成し遂げたような気分がした。その後下山、12時00分に美濃戸口到着、無事山行終了となりました。
学んだこと
(1)悪条件下において現在地の把握は必要不可欠。また、こういう時にこそ防寒具の善し悪しが顕著に表れる。
9日の悪天候の中、こまめに地図とコンパスを確認し現在地の把握に努めた。事前に配布してもらった2万5千分の1の地図が大いに役立った。また、ゴーグル等も含めた防寒対策がしっかりできていたため、悪天候にもかかわらず心に余裕があった。
(2)早発早着を心がける。
1日の早い行動開始は、途中で不意のアクシデントが起きたとしても、時間的に余裕があるため落ち着いて対処できる。これに関係し、自ら掲げた事前の心構えは概ね達成できたと思う。
(3)ウールの手袋は温かい。
今回初めて使用したウールの手袋は結構温かかった。結果的にウール手袋1組とオーバーグローブ1組のみの使用で事足りた。前回ウール手袋の代わりにフリース手袋を持っていったが、指先が冷たくなることが何回かあった。
(4)アイゼンで衣類等を引っ掛けないよう注意する。
アイゼンでスパッツを数回引っ掛け、ボロボロにしてしまった。その内の一回は樹林帯での下りで起き、大きくバランスを崩し運が悪ければ怪我をするところであった。幸い事なきを得たのだが、これが細い尾根上であったらと思うとゾッとした。
本格的な冬山はまだまだ初心者である私にとって、今回の山行を無事終えることができたのは、やはり先輩方からの指導および天候に恵まれたことが全てだとつくづく感じました。そういった意味で、今回は本当に「感謝」の一言に尽きる山行であったと思います。改めて、見守ってくださった方々(天候・山々などの「自然」も含め)、どうもありがとうございました。
記 尾崎昇
1月の終了山行と今回の山行で八ヶ岳縦走を終えて2種類の山を見た気がします。樹林帯の北八ッと岩峰の八ヶ岳、女らしさと男らしさを兼ね備えた山、替わり行く風景に自然の厳しさを感じました。
今回は、色々な経験が出来ました、一晩で40、50?の雪が降り昨日まではっきりあったトレース後がきれいに消えており計画時間に狂いが出たり、吹雪の中ゴーグルを着けたり、ルートの見極め、移動に2倍近い時間を費やしたり、さまざまなケースにすばやい判断力が必要とされる事が分かり、それが危険を回避する事につながる事が分かりました。今回の経験は冬山をやっていく上でプラスになり早いうちに厳しい経験した事が考え方の再確認できました。
今回お世話になった方々に感謝し、いつか恩返しできるよう頑張ります。
記 L.浜端
今回の山行は、厳冬期の縦走であったが、めまぐるしく変化する天候、それに相応し、多彩な表情を見せる山、また、メンバーそれぞれが持っている能力を充分に発揮し、後に悔いを残さない内容の濃い山行でありました。満足度 星4つ(おしーい!)
私なりに評価すると、3日間の短い間、一瞬、一度だけ慌てた場面があり、緊張したが、それ以外は満点でした。
リーダーの考え方(判断)は、山行中は責任を持つものですが、必ずしも絶対(正解)ではありません。メンバーそれぞれが今回の山行をどう理解し、消化し、今後の糧とするかで真価を問われるものです。
基本は自力で、切り開き、生還する力を養うことです。