四国 三嶺〜剣山 縦走

宮永 恭子

日 程   2003年3月14日(夜)〜16日(日)

メンバー  L:尾崎 森内 長浜 宮永

冷たい雨の中、自然の厳しさを知り、同行の皆様のありがたさと温かさを感じ・・・本当に多くの教えを受けた山行でした。残念ながら、雨のため眺望は全く望めませんでしたが、感謝の気持ちでいっぱいの、忘れられない思い出となりました。

今回の経験を大きな力にして、自然にも人にも常に謙虚に、感謝の心で接しながら、自分を高めていけたらと思いました。

行動記録  

3/14 三宮(21:30)〜見ノ越(翌1:30)(泊)

3/15 出発(6:50)[タクシー] 〜平尾谷登山口(7:20)〜三嶺山頂(11:30)〜白髪分岐

     〜白髪避難小屋(13:20)(泊)

3/16 出発(6:10)〜高ノ瀬〜丸石避難小屋(10:30−11:30)〜丸石(12:00)〜次郎笈

分岐(13:00)〜剣山西側巻道〜大剣神社(15:30)〜西島〜見ノ越(17:00)

3月14日(金)雨 奥深く険しい山の中、曲がりくねった細い道。何か出るんじゃないかと怖くなるくらい真っ暗だ。剣山が近づき、雪の残る夜道を車は慎重に走り、見ノ越駐車場に到着。仮眠をとる。

3月15日(土)雨 目覚めると雨。今年は雪が多いと事前に情報を得ていたが、それ以上に雨にひどく苦しめられようとは、この時は思っていなかった。山道を揺られながらタクシーで平尾谷登山口まで移動。登山道は固く凍った残雪があり、すべって歩きにくく、少し歩いてアイゼン装着。登り始めるとすぐに暑くなり、なるべく汗をかかないように体温調節に気をつける。しばらく歩くと夏道は雪に埋もれるが、木と木の間隔の少し広くなっているところが『道』らしく、地図とコンパスで方向を確認しながら進んでいく。私にはまだ、この微妙な広がりがよくわからず、「何でわかるんやろ・・?」と感心しながら森内さんについて行く。雨の中、濡れて重い雪の上をひたすら歩く。遠くの景色は全く見えないが、だんだんと木々の丈が低くなり、灰色の石灰岩の岩肌が現れてきた。頂上が近づいてきているはず。がんばろう!

雪に埋もれた池を過ぎ、ひと登りして三嶺の頂上に到着。何も見えない。くすん。さぞや絶景であろうと想像できるだけに、とっても残念。山頂は風がきつく、手袋はびしょ濡れで指先の感覚がなくなってきた。手袋を替えたりビニール袋を間に入れたりと各自対策をとるが、手袋は替えてもすぐにまた濡れた。急なクサリ場を下り、ひたすら歩く。

13時20分、白髪避難小屋着。もう少し歩いた方が明日が楽なのだが、次の避難小屋までは遠く、雨の中を途中でテント泊するのも嫌なので今日はここで泊。誰も来ない小屋の中に濡れたものを干し、くつろいで疲れを癒す。あたたかい飲み物と食事をとると冷えた体は温まり、避難小屋泊が初めての私にはとても楽しいひとときであった。

3月16日(日)雨 濡れたままで冷たい雨具と手袋と靴を身につけ、「ほんの数分でもいい、晴れて景色を見せて欲しい!」と願いながら出発する。稜線を剣山方向にひたすら歩く。心配したほどは足は埋まらず、時々夏道の土が見え、高低差も少なかったので楽そうに思えたが、高ノ瀬までは意外と長く、途中で獣道に迷い込んだ。雪が解けてむき出しになったブッシュはアイゼンでは歩きにくく、しばらくさまよって稜線に戻ったが、かなり体力を消耗した。

がんばって丸石避難小屋着。あたたかい飲み物を飲んで長い休憩をとる。疲れているのはみんな同じ。今回、尾崎さんと森内さんは最初から2人で共同装備を全部持って下さっている。濡れてさらに重くなった荷物を担いで、歩きにくい雨の中を・・・と思うと申し訳なくて、そして私がまだ重い荷物が持てないことはわかっていて、それでも一緒に行こうと言って下さった気持ちがありがたくて、目頭が熱くなった。

ここまでは私にしては順調に歩けている。もう少しがんばれると、この時は思っていた。ここからの下山も検討したが、剣に向かうことになった。

次郎笈への登りは、疲れてきた体には思った以上にきつく、ゆっくりゆっくり休みながらしか進めない。次郎笈の頂上に行っても眺望は望めそうにないので、分岐から剣の方に向かう。この稜線は東からの風がきつい。剣山頂まではもう一息だったが、強風に慣れていない私は飛ばされそうで怖く、疲れもあってうまく歩けない。剣も山頂からの眺望は望めないので、風の当たらない剣山西側の巻道からトラバースすることになった。風はなくなったが、斜面のトラバースは難しいし、どこが道なのかも分かりにくい。ここで迷うと大変。尾崎さんと森内さんが地図とコンパスと地形を見て必死でルートを探してくださっているのに、体力も気力も余裕のない私には地図を見ることも考えることも出来ない。私が山頂へのルートを歩けていたら、迷わなかったはず。『遭難』という言葉が頭をかすめた。私のせいでみんなを危険な目に遭わせてしまったことを大きく後悔し、申し訳なくてたまらなかったが、どうすることも出来ず、きっと道を見つけてくれると信じてついて行くのが精一杯だった   

 

不安になりながら歩き続けていると、一瞬霧が晴れ、巨大な石灰岩が目の前に現れた。大剣神社だ! 以前にも来られている尾崎さんと森内さんは巨岩に見覚えがあったらしく、位置が把握できてひと安心。よかったーっ!「神様、皆様、ありがとう!」

安心すると今度は、『凍傷』が心配になった。とにかく冷たい。リフト西島駅へ向かう途中でまた少し道に迷い、長浜さんも双眼鏡を取り出したりしてみんなでルートを探してくれているのに、やっぱり私は感覚のない手先と足先を動かしながら、ついていくのが精一杯。立ち止まってルートを検討していた時、また一瞬、霧が晴れ、リフト乗り場が見えた。あー、よかった!! ここでやっと本当に安心できた。リフトは動いてないが、もう大丈夫。途中の剣神社でアイゼンをはずし、「神様、ありがとう!」と心から手をあわせ、無事、見ノ越へと下山した。

今回の反省点と学んだこと

1.雨はこわい。自然を甘く見るな!

濡れて手先も足先も冷たく、感覚がなくなった。氷点下になれば凍傷になっていたかも。視界も悪いので、晴れていれば見えて迷わないようなところで迷った。

自然の大きな力と厳しさを教えられ、みんな力がついたが、雨天の時は行動しない方が賢明。もし行動せざるを得ないなら、十分に備える事。

2.体力不足を反省

私の体力不足で巻道からトラバースしようとして道に迷い、みんなを危険な目にあわせてしまった。また、疲れてくると思考力も判断力もなくなり、地図さえも広げられなくなった。体力づくりと、自分を知り無理のない山行をすることが大切。

3.気持ちの甘えを反省

「連れて行ってもらう」という、依存的な意識では行くまいと、自分なりに勉強したり、出来ることを探そうとしたが、結果的に頼りっきりで助けてもらってばかりの山行となってしまった。深く深〜く反省。

4.適切な判断をするためには

経験、知識、精神的・体力的な余裕が必要。

尾崎さんと森内さんが無雪期の剣に登っておられたこと、地図と地形図の両方があったことも、迷った時、大いに役立った。

5.仲間と行く山は楽しい!

 いつもいつも思うのは、同行の皆様への感謝の気持ちです。とても素直に皆様や自然に感謝できることが大きな成長だと感じています。

自然にも人にも謙虚で、常に感謝の気持ちを持ち続けたい、美しいものに感動し、大自然から元気をもらって、おおらかな心でいられるようにと願います。

これは今回の山行だけでなく、神戸労山に入会して今まで見守って下さった全ての皆様から学んだことです。本当にありがとうございました。 

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