自然と一体になれる泊まりの沢登り

比良 口の深谷・奥の深谷

西記

日程:2004年7月3日(晴)〜4日(曇)

パーティ:L丸尾、SL尾崎、SL手崎、江本、森内、為末、西

記=西

私の今年初めての沢登りは、憧れのお泊まり付でした。去年から「泊まりの沢登りは、自然と一体になれるし、とても楽しいよ!」と聞かされあこがれていましたが、「体力と技術も必要!」といわれ、何時になれば行けるだろうか?と思っていました。体力も技術もまだまだですが、お泊まり沢登りデビューでした。

初めて経験することが多く、実際に経験して「そうかぁ・・・・。」と理解できたことが多くありました。また、天候にも恵まれ、自然の中に身を置く事の心地よさを十分感じられたとても楽しい沢登りになりました。

 

7月3日 晴

坊村に着くまでは雲も多く天候が心配されたが、明王谷の広場で車を止め身支度を整え沢登りが始まると天候もぐんぐん良くなった。

登山道を歩くことなくすぐに沢登りが始まった。むっとした空気の中、冷たい水は気持ちが良かった。躊躇することもなく沢をどんどん歩いていった。勢いのある滝の水しぶき、様々な形で流れ出す水、さまざまな色・表情の水が私達を迎えてくれた。時々顔を上げて空を見上げると、新緑の木々が陽の光を受けさらに鮮やかさを増し、青い空がその間に見えた。

きれいだなぁ…と思った。

岩に同化した大きな蛙に怯えながらへつっていったり、ロープを出しもらって滝を登ったり、泳いだり、沢登りは緊張するがとても楽しい。

12時前にシラクラの壁に着き、薪を集めて飯盒に湯を沸かし塩ラーメンを作った。濡れた身体に暖かいラーメンはおいしかった。薪で濡れた衣類を乾かし十分休憩をとり出発した。

ここまで来るのにロープなど使用し、かなり時間がかかっていた為リーダーから出発前に「これからは、あまり時間のかかるようなことはしないように」と指示があった。

2時間くらい溯行すると元会員だった方が1999年2月に遭難した場所に着いた。丸尾さんは線香を持ってきていて私達もその線香を捧げ、その時の話を聞かせてもらった。遭難場所には小さなケルンがあった。

4時30頃、目の前にとてもきれいな大きな優しい滝があらわれ私達は歓声をあげた。

その滝はとても大きく、やさしく流れ落ちる滝だった。あまりにもきれいな滝を前にしばらくその場を離れることができなかった。

5時過ぎ、口ノ深谷源流あたりで幕営。薪を集め夕食の準備をした。非常に天候に恵まれ、風もなく、暑くも寒くもなく焚き火を囲み夕食をお腹いっぱい食べた。

焚き火はとてもいいものだった。

傍で濡れた衣類を乾かし、紅茶やお酒を飲みながら語らう時間が十分あった。

空を見上げると星が見えた。沢の流れの音が優しく包み、焚き火の明かりはとても心を落ち着かせてくれた。沢登りの途中も含め他のパーティに会うこともなく、沢は私達の貸切りだった。寂しい気持ちにはならなかった。自然の中にとけ込んだようでとても居心地が良かった。

 

7月4日 霧雨のち曇

朝は鳥のさえずりと沢の音の中で迎えた。いいなぁ…と思った。

朝食をとり、出発。

昨日に比べると水は冷たかった。沢を少し歩いて登山道へ。

中峠から小川新道を下ったが、かなり急な下りだった。昨日の沢登りで遊びまくっていた私の足はかなり疲れていたと思う。そこへこの下りは堪えた。膝が笑っていた。もう駄目だ!と思いながら下っていたらこけた。ザックが頭を越し一人では立ちあがる事ができず手崎さんにザックを引っ張ってもらいやっと立つことができた。泣きそうだった。

9時過ぎ、沢登り教室のメンバーとの待ち合わせ場所に到着。不要なものをツェルトにデポし、沢登り教室のメンバーを待つ。沢登り教室のメンバーをサポートするために5パーティに分散して溯行をはじめた。

膝がボロボロ状態でもう「奥ノ深谷」はあきらめよう!と思っていたが、水の中に足を入れたら自然と足が動き吸い寄せられるように沢を登り始めていた。

「ちょっと急な流れの中に足を入れてみよう!」とか「この滝は登れないかな?」とかの思いで頭がいっぱいで「しんどい」気持ちはまったくなくなっていた。

本当に不思議だ。沢登りは童心にしてくれるなぁ・・と、つくづく思った。

どんどん進んでいって「ここで終了!」と言われ奥ノ深谷はあっけなく終わってしまった。

ここで合流した沢登り教室のメンバーと別れ下山。

とても充実した比良の沢登りだった。

 

<地形図>1/25.000図:花背、北小松、比良山

 

<コースタイム>

7月3日 坊村9:00→明王谷(入渓)9:25−三の滝10:50(休憩)→シラクラの壁11:55(昼食・焚き火でラーメン)−13:00→大きな滝13:55(写真・休憩)−神戸労山の元会員が遭難した地点14:16(休憩・線香をあげる)−14:30→標高845m付近15:40(休憩)−15:50→最後のきれいな滝16:30(写真・休憩)−16:45→標高950m付近・口ノ深谷源流17:05

7月4日 テント場6:40→登山道へ7:00(身支度)−7:10→中峠7:30(休憩)−7:40→大橋付近8:20(休憩)−8:30→奥ノ深谷出合9:15

(奥ノ深谷のコースタイムは沢登り教室のため省略)

 

<反省点>

1.直前の不参加は出来る限りさける。(やむをえない事情があれば無理に参加する

ことはない)食料の購入、装備分担、メンバーシップに影響を与える。

 

2.食料担当は購入、分担はもちろんの事、調理方法などメンバーに指示する。

天幕場に着けば分担した食材は一箇所にまとめ、今回の使用の食材を分け、調理方法

をメンバーに指示する。

明るいうち、幕場と調理場所(焚火の場所)が近くとは限らない。

メンバー全員が焚火を囲み調理をし、酒を飲みながら話をする時間を多く持ちたい。

 

3.装備担当は共同で使用する物は指示し、あれば便利と思う物を持ち込まないようにする。

1グラムでも軽く心がけることが全体の重量軽減、安全溯行につながる。

 

4.個人装備は出来るだけ必要最低限にし軽量化する。

メンバーで行くメリットをいかし、相互に助け合う。

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登り初めての泊まりの沢登

記:為末

 

会のHPに泊まりの沢登りの山行企画が載っていた。去年の夏から既に沢登りに憧れていた私はとても行きたくなった。リーダーのMさんはお会いしたことのない方だったので、いきなり初心者の私が申し込んでも断られるだろう、と思っていたが、沢登り・焚火・飯盒炊飯….などと思うと頭の中で想像の情景が広がっていく。泊まりじゃなくては見られない夜空や朝の空気や風を感じたい。

他の山行の際に今回の沢に参加される先輩のTさんやNさんに相談してみたところ、「メールしてみれば」と助言して頂きお会いした事もないのに失礼かと思いつつメールを出してみた。「参加してください」嬉しい返事をもらった。やったぁ!

こうして、Mさんの暖かいご配慮により、私の泊まり沢登りデビューは決定した。

 

当日はMuさんの車に乗せてもらい比良へ向かった。入会前に行った冬山教室で惨敗した山だ。あの時は今回参加されたEさんに荷物を持ってもらうという失態を晒した。いやな事はこの際忘れてしまおうと、コンビニでお菓子を買ったりしてウキウキしながら比良へ向かう。

MUさんにお菓子の多さを指摘されつつ、あっという間に明王谷の入渓点に到着。

お天気も良くウキウキ気分は最高潮になるが、今回の最低の目標「人に迷惑をかけない」を頭の中で繰り返しながら沢の装備をつけた。

沢に入ると、その前の週に行った六甲の西山谷とは水の深さが全然違った。

リーダーMさんの後をついて歩くがMさんはひょいひょいと軽やかに歩いていかれるので最初はついて行くので精一杯だった。

次々とあらわれる滝を登ったり巻いたりしているうちに少し感じた事があった。今まで私は踏み均された登山道しか歩いたことがなかったが、沢は上手く言えないが「自由」なのだ。

沢の中を歩いている時もへにゃへにゃとした水流を足に感じ、滝が現われば、登ってみるか巻いていくか色々な選択ができる。

まさしく「道なき道をゆく」という感じ。楽しい!!

空を見上げると、ブナや楓の葉っぱの隙間から青い空が見えて、とても綺麗。

水の中に浸り空を見上げていると、自分も自然のほんの小さな一部分になれた気分だ。

これが沢登りの醍醐味なのかな・・・・。

 

そうこうしている間に、私の楽しみにしていた焚火の時間(昼食)になった。みんなで倒木を集め焚火をした。EさんやTさんはとても段取りが良くすごいなーと思う。あっという間に燃え始めた。今までBBQ(バーベキュー)程度でも着火剤を使用していた私は「山男かっこいい」と思った。

昼食は各自塩ラーメンを持参することになっていたのだが、7人中5人がサッポロ一番だった。私とリーダーのMさんはグルメ風のラーメンを持っていっていたので調理するのに少し困った。山ヤの常識 塩ラーメン=サッポロ一番 ということを学んだ。

暖かい食べ物と焚火を満喫し、午後の行程に入る。

 

午後はカエル三昧だった。今まで見たことのないような色やイボイボを持ったカエル(しかもでかい!!)にたくさん出会った。彼らのフィールドに私たちがお邪魔させてもらっているのだから、と思うとこんな色とカタチで静かに生きているカエルに妙に愛着がわいた。カエルの観察を楽しみながらどんどん登った。

 

日ごろからKさんにRCの指導をして頂いていたので、前半は楽しんで滝を登ることができた。

Kさんに感謝すると共に、日ごろのトレーニングの大切さを実感した。

 

少し歩いたところで、私にとって一番の難所が訪れた。5m位の滝だったのだが、途中で上にも下にも行けなくなってしまった。足場が悪くどんどんと崩れてしまう。ホールドも滑って離れそうになり必死にその場にしがみつくことしかできない。お菓子や食料で膨らんでいた私のザックは重く、体が振られてしまう。私、落ちる??頭の中は恐怖で真っ白になり、ますます身動きがとれない。下で見ていたOさんが途中まで登ってきてくれてホールドや足掛を探してくれる。指示された通りに体を動かして何とか登ることができた。

こうやって、サポートしてくださる方がいてくれるお陰で私のようなレベルの者でも沢登りに挑戦することができたんだな、と感謝しながら気を取り直して歩いた。

今後はRCトレの際にも荷物を背負って練習しよう、食料は程ほどにしようと心に誓った。

 

沢登りは滝を登った所の景色が下から見えないだけに、ワクワクした。最後に現われた滝は想像もできないような美しいカタチの滝だった。飛沫がシャワーのように顔に当たるのが何とも心地よかった。自然の造形美を観賞しながらしばらくその場でじっとしていた。来てよかったーとしみじみ感じた。空も開けていて太陽の光に水しぶきが光ってキラキラしていた。

 

そうしてこの日の最大のイベント夕食&焚火だ。また皆さんの手際の良さについていけず、私は何も協力することができなかった。反省。みんなで焚火を囲みつつ、ゴハンが炊けるのを待つ。

あーこれだ!私のしたかったのは、と嬉しくなった。

1日を共にした仲間(生意気だが、あえて仲間と言わせて頂く)と焚火を囲んでお酒を飲みながら語るのは至福の時だった。空には満天の星と、沢のせせらぎ、他には誰もいない自然の中で暖かい焚火に当たり、なんて贅沢な時間だろうと実感した。

あまりに星がきれいで、ツェルトで寝るのが惜しい気がして聞いてみた。「私外で寝てもいいですか?」幸い禁止令はでなかった。マットやシュラフを外に持ち出し焚火から少し離れたところで野営開始。横になると、視界は星空だけ。日常とかけ離れた世界だ。焚火はまだ燃えているから暖かい。そうこうしているうちにみんなそれぞれ眠りについたようだ。

夜中に目が覚めて目を開けると、そこには夜空が広がっている。最高だった。

沢の音以外何も聞こえない静寂の中で、月がもの凄く明るくてびっくりした。これを月光って言うんだな。丸い月をじーっと見ながら幸せな気分でいっぱいになった。

 

翌日は沢登り教室だった。

私も受講生の初心者なのに、こんな楽しい思いをさせて頂き、リーダーのMさん、サポートしてくださった皆さんに感謝の気持ちでいっぱいだった。自分で二日間行程をこなせるのか非常に心配していたが、経験豊富なメンバーの皆さんのお陰で楽しんで、また色々と学習しながら二日間を過ごすことができた。

 

「夏は沢」と色々な方から聞いていたが、「夏は沢」だと思った。

今回泊まりで参加させて頂き、沢の中で丸2日過ごし痣や虫刺されだらけになったが、本当に良い経験ができた。Mさんには戻ってからも反省点や今後の参考になることを指導して頂いた。育てていこうとして下さる気持ちが嬉しかった。

 

このような会に所属し指導して頂ける場を与えてもらえた事に本当に感謝です。

次の目標は泳げるようになること。そしていつかは憧れの屋久島の沢に挑戦してみたいです。