三方崩山、他白山周辺 冬山下見山行記録

     宮永 記

日 程  2004年10月9日(土)夕〜10月11日(月)

メンバー L:北口 杉田 坊垣 今田カ 黒田 宮永

行動記録 

10/9

15:00 神戸発(途中約1時間ロス)→東海北陸自動車道 荘川下車 →R158 →R156 →平瀬

21:40 平瀬温泉キャンプサイト着。平瀬温泉 標高約610m。

 

10/10 <三方崩山 夏道登山と取り付き偵察>

6:45 キャンプサイト発。車にて、平瀬の登山口より車道の終点まで移動。

7:15 車道終点着。標高約800m。水場と車5台ほどの駐車スペースあり。

7:30 出発。頂上まで4.8kmとの表示。

8:20 小休止5分。標高約1200m。

9:15 休憩。1624mピーク。西側が大きく崩れて、荒々しい岩肌が眼下に広がる。

9:30 出発。これより先、細い尾根や岩場、鎖場あり。崩壊した崖のような岩肌が、間近に見える。

特に1956mピークより先は、急下降の岩場や非常にやせた尾根あり。ガレ場も多いので注意。

10:45 三方崩山頂上着。2058.8m

11:05 下山開始。急な下りが続くので、滑落や転倒注意。

13:10 車道終点着。車で移動。途中で、取り付き点として平瀬発電所付近を視察。

13:30 平瀬温泉キャンプサイト着

    (〜白川郷見学、平瀬温泉入浴)

 

10/11 <山毛欅尾(ぶなお)山、銚子ヶ峰 取り付き偵察>

8:20 平瀬温泉キャンプサイト〜車で移動→R156→白山スーパー林道→R360→白山一里野温泉

10:05 白山一里野温泉スキー場着。山毛欅尾山への取り付き点として、中宮発電所の北付近を偵察。

10:40 偵察終了。 〜移動→R360 →R157〜白峰〜 →R158〜九頭竜湖〜白鳥〜石徹白

14:35 白山中居神社着。車にて、石徹白登山口(銚子ヶ峰への登山口)へ。

14:55 石徹白登山口着。登山口周辺を確認し、車で戻る。

15:20 白山中居神社着。偵察終了。  〜白鳥 →東海北陸自動車道〜

21:00 神戸着

 

10月10日(日) 晴れのち曇り

 冬になると真っ白な、道なき雪山を、先輩方が迷わず歩かれるのが不思議だった。そして、夏道とは全く違った下降路でも、適切な場所に下山されるのに、いつも感心していた。冬山の下見山行は、私にとって初めての体験なので、一体どんなふうにするのか興味深い。しかも白山周辺は紅葉の頃、色づく秋山を歩けると思うと、とても楽しみだ。

台風で1日遅れの出発となったため、大笠山〜笈ヶ岳の登山は断念し、三方崩山の方に登ることになった。平瀬温泉キャンプサイトより、車で平瀬登山口の車道終点まで移動。ここまで車が入れて、駐車スペースもあるとのHP情報提供者に感謝。ただ、舗装がしてない悪路なので、四駆車でないと大変だ。水場で水を確保し、登山を開始する。

 

水場の横の階段を昇ると、いきなりの急登。樹林帯の中をしばらくジグザグに登り続ける。しだいにブナの木が目立つようになり、いつの間にか辺り一面、ブナの森となる。白っぽい迷彩服のような木肌に、涼しげな黄緑色の葉。登るにつれて黄色く色づいていく。やさしい黄色が、陽に透けてきれいだ。立派なブナの原生林に包まれていると、長い間、大切に育まれてきた、自然の命の静かな営みを感じ、心が安らぐ。

1050m付近で支尾根に出る。冬場に平瀬発電所奥の尾根から取り付いた場合、このあたりで合流しそうだ。木の葉に覆われた樹木越しで形はわかりにくいが、支尾根の方向を確認する。

1200m付近で小休止。このあたりはブナの紅葉が真っ盛り。少し登って1244mのピーク付近より、尾根に出る。傾斜がやや緩くなるが、しばらくすると、また急な登りが続く。時々ふり返ると、黄色や緑やオレンジに彩られた錦秋の稜線が眼下に広がり、とてもきれいだ。眺望に励まされながら、黙々と登る。

 

1624mピーク付近で休憩。西側が下方まで崩れた白っぽい岩肌が、直下に見下ろせる。これより先は、細い尾根や岩場があり、鎖場も出てくるので注意が必要だ。標高が上がるにつれ、樹木はブナからダケカンバに変わる。所々で、大きく崩壊して崖のようになった岩肌や、ガレ場が近くに迫り、まさに「三方崩山」という名前通りの荒々しい山容だ。しだいに木の高さは低くなり、針葉樹に変わる。

1956mピークより先は特に注意。急な下りの岩場があり、それを過ぎると、スパッと両側が切れ落ちた、非常にやせた尾根がある。冬はナイフリッジの難所となることが素人目にも想像できる。短い区間だが、とても緊張しながら歩いた。右側がガレ場になった急な登りもあり、ここも冬は手強そう。このあたりは、冬場はザイルを使っても、それなりの技術がないと難しそうだ。

やせ尾根と岩場のアップダウンが続き、左手下方に、大きく崩壊した岩肌を見下ろしながら、それに添うように進んでいく。少しなだらかになると間もなく頂上だ。山頂は狭く、笹が茂っている。ガスがかかって、遠くが見えなかったのが非常に残念。

 

頂上でゆっくり休憩した後、下山を始める。なだらかなのは最初だけで、しばらくすると急な下りが続く。前夜の雨で、土や木の葉が濡れていて、滑る滑る。2000m付近で木の根っこに滑って、斜面の茂みにつっこみ、とっさに木をつかんで、あやういところでセーフ。危ない危ない、落ちると大変。登る時も急だと思ったが、下ってみると、思っていた以上に急勾配だったことに気づく。やせ尾根や片側が切れ落ちたところは、くれぐれも注意だが、特に危険な場所はないと思っていた下の方も、かなりの急降下の連続。冬場のラッセルを想像すると、気が遠くなる。しかも、歩き方が悪いのか筋力不足なのか、登山道に沿って、随所に樹木に張ってあったロープを掴みながらも、何度も滑ってしりもちをつく始末。これではいけないと、日頃のトレーニング不足を深く反省しつつ、登山口に着いた。車に乗り、途中で、冬場の取り付き場所と考えている平瀬発電所付近を確認し、キャンプサイトへ戻る。

今回歩いてみて、三方崩山は、登り始めから急登続きであり、冬場は大変なラッセルが予想されること、また、上部はやせ尾根やガレ場が多く、ザイルが必要になりそうなところが何箇所もあることが分かった。体力と技術を必要とする、かなり難しい冬山になりそうだ。

 

夕食は、温かいすき焼きを囲み、先輩方共通の思い出話に花が咲く。大変だったこと、がんばって歩いたことなど、本当に楽しそうな笑顔で語り合う。一緒に楽しい時を過ごしながら、「山仲間っていいなぁ・・」と、しみじみと感じた。どんなにきれいな山や自然の風景にも増して、その時、一緒に歩いた仲間こそが、大切な記憶として、いつまでも心に残るような気がする。私もこれから一緒に、もっともっと、たくさんの思い出を作っていけたらいいなぁと思った。

 

10月11日(月) 曇り

 今日はまず、山毛欅尾山の取り付きを偵察する。車で白山スーパー林道よりR360に入る。車窓より地形を観察するが、中宮温泉付近は急斜面や崖が続き、適当な場所はなさそうだ。白山一里野温泉の北に伸びている、顕著で比較的なだらかな尾根に、中宮発電所の北あたりから取り付こうと考える。林道より、取り付き点付近の尾根の様子を観察した。ここなら取り付けそうである。

 

次は、銚子ヶ峰の取り付きを偵察。白山スーパー林道は通行料が高いため(片道3150円)、R157→R158を経由して、石徹白の白山中居神社に着く。冬は、これより先は徒歩となりそうだが、今日は車で移動する。細い林道を石徹白川に沿って約20分北上して、石徹白登山口に到着。徒歩は夏道コースタイムで2時間。ということは・・・豪雪の林道だと、登山口にたどり着くまでに何時間かかるやら。

登山口周辺を確認後、神社に戻る車中で地図と地形とを見比べながら、林道歩きを短くできる適切な尾根ルートはないかと検討する。しかし林道沿いは崖や急斜面が続き、間に沢もあるので、途中でうまく林道に合流するのは難しそうだ。この長い林道を歩いて銚子ヶ峰を目指すのは大変なので、代替案として、白山中居神社から、北の尾根を、851mピーク〜1221mピークを経由し、芦倉山か丸山を目指すコースが浮上したが、丸山までならかなりの距離があり、こちらも大変そうである。神社まで戻って下見は終了し、帰路についた。

 

はじめての冬山下見経験は、何をみておくかを学び、実際に歩いてみて危険箇所や冬の難しさを自分なりに感じ、非常に勉強になる有意義な山行だった。まだ私には、難しい冬山は歩けないが、歩ける冬山が1つでも多くなるよう、まずは体力づくりに励みたい。

  

<今回学んだこと>

(1)冬山は体力と持久力が必要。まず、これがなくては何もできない。

(2)雪山になると、道も様子も全く違ってくるので、雪のついた地形を想像しながら歩くことが大切。

(3)冬山下見のポイント

・取り付き点までのアプローチ、取り付き場所の地形の確認。

・山容を観察し、尾根の分岐や迷いやすそうな所をチェック。

・岩場、やせ尾根等、危険な箇所の観察と、対策の検討。(ザイル、巻き道等)

・夏道と雪道の違いを考える。冬はどうなるか、雪があれば通れるところ、雪があれば通れないところ。

・テント設置やビバークできそうなところをチェック。

・下山場所の地形の確認。尾根から下りたところは、崖や渡れない沢になっていないかなど。

・緊急連絡時に備え、近くに人里がない場合は、携帯が通じる場所をチェック。