金糞岳ピストン

坊垣 記

 大日ヶ岳か、金糞岳か、正月明けの三方崩山に行くまではどちらにしようか、迷っていた。三方崩山で胸、いや頭までのラッセルで敗退してすぐ、金糞岳に決めた。大日ヶ岳よりかなり南に位置する金糞岳なら、白倉岳を回るラウンドに適当な積雪では、という目論見だった。ところが、初日の林道歩きから目論見は大きくはずれだした。1時間くらいと見込んでいた林道に2時間以上かかり、尾根に取り付くと次第に膝下から、膝上へ、深いところでは太腿までの雪になった。日が差し始めると雪は重くなり、ワカンにまとわりつく。1日目は頂上付近で幕営の予定だったが、1,000mを越えようやく展望が開けたあたりで14時を過ぎ、一部のメンバーの疲労状態を考えて小朝の頭下の平坦地泊まりとした。金糞岳、白倉岳の後ろには天気予報に反して気持ちの良い青空が拡がっていた。
翌日はラウンドは無理と判断し、幕営地からのピストンに変更して山頂を目指した。ラウンドを諦めたので時間的に余裕がある。北口さんの提案で初級者数名にトレーニングを兼ねてラッセルを任せる。2時間ほどで山頂に到着、曇天ながら視界は良く、遙か彼方に白山が浮かぶ。三方崩山からはこれほど離れているのになおこの積雪、2年前に来たときには雪が少なすぎて物足りなかったのに。気まぐれな雪が恨めしく思われる。行けなかった白倉岳からの稜線がゆったりと琵琶向かって伸びていた。
今回の山行は冬山教室を終えた初級者も加わっての山行だったので、ラッセル技術を身につけ、ルートファインディングを体験してもらえたらと考えていた。 ラッセルを堪能できるだけの積雪と北口さんの指導もあって初級者には充実したものになったと思う。ただ、金糞岳はルートが明瞭で、また標識も完備されていて、ルートファインディングの余地がなかった。白倉岳からのラウンドのコースで下山すれば体験出来たはずで、この点が少し心残りになった。
 今回予備用のガスカートリッジが1つ足りないというミスをやらかしてしまった。メールでのやり取りは、直接会ったり、電話でのやり取りよりも誤解や、思いこみを生じやすいかも知れない。確認作業を怠らないこと、これが今回の私の教訓となった。

 山行記録

     宮永 記

日 程  2005年1月21日(金)夜〜1月23日(日)

メンバー L:坊垣 北口 杉田 尾崎 西 馬河 小椋 増田 松本 宮永

 

行動記録 

1/21(金)

20:00 神戸発

23:30 近江高山キャンプ場着。これより先は除雪なし。車を停めて仮眠をとる。

 

1/22(土)曇り時々晴れ

5:00 起床

6:30 キャンプ場発(標高約250m)

歩き始めてすぐにワカン装着。東俣谷川沿いの細い林道を、追分の登山口へと向かう。林道はワカンをつけて靴が埋まる程度の積雪。4km弱だが思ったより時間がかかる。足慣らしのラッセルが十分出来た頃、ようやく取り付きの尾根が見えた。細い橋を慎重に渡る。

8:45 金糞岳追分登山口(約430m)

急登を登り、尾根に取り付く。これより夏道に沿って山頂を目指す。山中に入るとたちまち雪は深くなり、膝まで埋まりながら樹林帯の中をひたすら登る。

10:10 林道との交差地点(660m付近)、カーブミラーが頭だけ見えている。

気温が上がってきたせいか、雪は水分が多くなってきた。ずっしりと重く、ラッセルが大変だ。急斜面では腰まで埋まる。膝で雪を固めた上を歩こうとするが、慣れないと難しい。夏道は雪に埋まってわかりにくく、針葉樹と広葉樹の境を目印に、ルートをとって行く。地形図ではなだらかで歩きやすそうな尾根に見えるが、雪が深くて重くて、思った以上に時間がかかる。やっと視界が開けて小高い丘を登りきると、林道が見えてきた。

13:00 林道との交差地点(960m付近)、カーブミラーが頭だけ見えている。

林道から、短い急登をひと登りし、さらに樹林帯を進む。このあたりは両側に広葉樹が茂っている。

13:35 1006mピーク。木々が少なくなり、少し視界が開けてくる。

金糞岳〜白倉岳〜奥山とラウンドするには、今日は金糞岳の頂上まで行っておきたかったが、予想以上の積雪量のため、時間的にもメンバーの体力的にも無理と判断し、幕営地を探しながら歩く。

14:25 1083mピークの西の、なだらかな所(約1030m)にて幕営。

ワカンをはずすと、腰近くまで埋まる。真っ白な雪と樹氷で覆われた金糞岳の山頂が、間近にきれいに見えている。

 

1/23(日)曇り

4:30 起床

白倉岳〜奥山へのラウンドは、時間的にも積雪量からも難しいので、今日は軽装で金糞岳をピストンした後、来た道を下山することになる。

7:10 テント場発(約1030m)

樹林帯の中を東に直登して稜線に出ると視界が開け、まっ白な雪をかぶった台地のような伊吹山が、すぐ近くに見える。朝は気温が低いせいか、雪は昨日ほどは重くない。それでも膝丈以上のラッセルは重労働。先輩方にラッセルのコツを教えてもらいながら奮闘する。

 7:50 小朝ノ頭(約1120m)

稜線からの眺望が非常に良くなってくる。左に白倉岳〜奥山、右には遠くにある真っ白な雪をかぶった白山や中央アルプス?の山々までがきれいに見える。アップダウンを繰り返し、金糞山頂上の手前の、少し痩せた部分を慎重に通過して、最後の登りを終えると、目の前の視界が開けた。

9:40 金糞岳山頂着(1317m)

白くきれいな雪に覆われた広い山頂からは360度の大展望! 雄大に広がる奥美濃の山々、白山、雪で真っ白な白倉岳、静かに広がる琵琶湖。冬の眠りについた大自然を心静かに眺める時、「雪山っていいなぁ」と、しみじみと思う。疲れが吹き飛ぶ、幸せな時間だ。風もなく、ゆっくりと眺望を楽しむ。

10:10 山頂発

11:00 テント場着(約1030m)、テント撤収。

11:35 テント場発

帰りはトレースがあるので非常に楽。昨日、時間をかけて登った道を、あっという間に下る。

11:55 林道との交差(960m付近)

12:35 林道との交差(660m付近)

12:55 登山口着(約430m)

林道途中で、大勢の銃を持って猟をしている人に出会う。猪が2匹、捕獲されていた。登山中に間違えて撃たれたら大変なので、目立つ服装の方が良いかもしれない。くれぐれも注意!

14:10 近江高山キャンプ場着(約250m)

 〜 途中で入浴、食事 

19:10 神戸着