加賀の白山山系/笈ヶ岳山行記録


笈ヶ岳のピーク


◎日程:2005年03月17日(木曜日)〜2005年03月20日(日曜日)

メンバー:北口(CL・気象)、江本(装備・車輌)、杉田(食料)、坊垣(食料・会計)、庄司(記録)

◎費用:6千円弱。

行動記録:(庄司 記)

◎(1日目)天候:曇天/小雨。

03/17  20:40 阪神今津駅集合。(22:10 賤ヶ岳SA着←激速ナリよ)

→(00:30)白山一里野のバス停着/酒宴/幕営。

◎(2日目)天候:曇天→降雪→小〜中程度の吹雪、夜半には弱くなり収まる。

03/18  04:30 起床/天幕撤収。一里野スキー場ホテルのトイレは終夜開放しかも温水便座。文明の恩恵を味わうと共に、「これから行くぞ」という気合いが、オシリから急速に抜けていく。

→06:00 出発/中宮発電所(無人?)へ通じる道は、除雪されず雪で塞がってる。柔らかい雪のため、歩き出しすぐワカン装着。吊橋の踏面は降雪損壊防止のため?融雪ホットプレートを張ってあり安全に渉れた。林道をキチンと右回りに周回すると遠回りなので、ショートカットして尾根に通じる急斜面をワカンで駆け上がる。地形を判断しての迅速な行動だった。人里近い山だが、既にカモシカの足跡を見た。

→導水管頂部(639m)へ09:10着。導水管の頂部は、濃い群青の勢いのある水を溜めた長方形のプールだ。山毛欅尾(ブナオ)山の湧水をここで受けるのだが、狭い尾根の豊富な水量に驚く。→10:00 (1,058m)。→10:40 ワカンを外し壺足/小休止。この辺から小〜中程度の吹雪。多少の視界はあり、稜線上という事もあり不安は感じず、また地形図をどうにか読図できた。

→11;45 (1,300m)小休止。山麓から、山毛欅尾山頂(1,365m)までが遠かった。ようやく山頂を越すと、これから緩やかな道中となる。→12:40 emoさんが足を捻って、回復のため狭い稜線上で半時間ほどビバークする。僕は、ビバーク初体験で呆然としており、ベテランに何度も強く促され中に入ったけど、ツェルトの薄い布地一枚で吹雪を完全に防ぐ事の大切さを身を以て知った(=稜線上で遮蔽物が無いと急速に体温を失い、非常につらい)。ツェルトの中では、皆さん和気藹々と気配りされ、深刻な気分はまったくなかった。

その後、稜線上の雪庇に注意しながら歩く。狭い稜線の連続では気が抜けないけど、集中できて楽しい。雪の状態は悪い。表面がザラメ状に薄くモナカの皮状に氷結し、中身は深い柔らかい雪。これは悪い状況だそうだ。

→14:00 1,271mピークの丸い山頂で幕営。sugさんが行動停止直前に防寒服を素早く着込んだのが印象に残っている。吹雪の幕営準備で身体を冷やさぬ様にするためだ。早手の対応が大事と知る。

◎(3日目)天候:曇天→晴。

03/19  最初の予定では、冬瓜(かもうり)山手前の幕営だったから、距離的に2〜3割不足している。吹雪でなければノルマは果たせたけど、『冬山は自然条件との折り合い』だから仕方がないです。

04:30 起床。07:30 撤収。

→09:00小休止。稜線から、白く雲の湧く白山が、寝そべる様に大きく見える。山は、晴天。絶好の登山日和。全員サングラスを着ける。

この辺まで登ると、雪庇もけっこうシビアなものが出てくる。崩れた雪庇を見て騒いでいると、bogさんに「雪庇は崩れるものです」と言われる。雪庇/雪崩危険箇所は、1人ずつ離れて渉る。shoは危険箇所で太股まで雪で埋まり、脱出に苦労し大いに肝を冷やす。


ビレイするkitさん。
ピッケルを雪中に打込んでセルフビレイ(背面の赤いピッケルバンドに注意)。
ザックも転落防止のため、松の木にガッチリ固定。
画面下に延びる赤いザイルは、shoの為のビレイ(末端は松の木にビレイ)。

→10:50 冬瓜山手前の岩崖で雪稜登攀。「松や岩などの手がかりもあり、上部に雪庇もなく登攀できると判断した」そうで、トップで登られたkitさんは、六甲山の堡塁岩トレの時の様に、余裕でビレイ。


登攀終了されるsugさん。この下には垂直に近い壁がありました。

→ここから冬瓜山山頂を目指すが、「之」の字状にうねって渡渉バランスを判定できない、高低差のある危険雪庇が行く手を阻んだ。「shoさんが先に行く?」と、微笑を含んだ申し出があったが、丁重にご辞退申し上げた。


写真では判りにくいけど、「之の字」型の危険雪庇(一部)です。
雪庇は、この後、左に折れ、右に折れています。


ここで縦走をあきらめ後退。ピストンして下山する事になる。→13:20 幕営。

晴天の春山は暖かい。テント屋根で寝袋を干す住民/シェスタ(昼寝)する住民/酔っ払う住民。

その後夕暮れのブナ林で自然鑑賞会/撮影会。私たちは、冬季の白山大山塊のまっただ中に居たのです。これだけでも来た甲斐がありました。


テントサイトです。
明るく日が射していて、暖かかった
ブナの根本まわりは、雪が融けています


翌朝は冬瓜平に回って、冬瓜山の危険箇所を迂回する道筋を確認する事となり、早立ち準備をおこなう。ちなみに今日は、起床してから撤収まで3時間もかかった。撤収時間を短縮するため、明日の朝食用の水作り/オジヤを仕込む。結果的に、これで1時間以上早く撤収できた!

◎(4日目)天候:晴れぎみの明るい曇天。

03/20  04:30 起床、06:00 撤収。


モルゲンロートに、山頂が桃花色に輝く、加賀の白山。


→途中、ザックをデポして、冬瓜平への迂回路を調査した。冬瓜平の終了地点にある急な尾根から、慎重に藪を掴んで、冬瓜山へ登っていく道筋を確認した。登山者は、その後、白山の北方稜線を北上して、笈ヶ岳を通過する事になる。

今回の敗退(?)は哀しいけど、『何が起こるか判らないほど変化が有りすぎ、だから冬山は面白い!』と言われると、納得できます。

→07:40 デポ地点へ戻り下山開始。そういえば、芦屋川アイゼントレの後、「アイゼンの刃が非常に甘い」と注意され、慌てて電動ヤスリで研いだ。労山3年目でアイゼンの刃が甘くなったので、僕は結構アイゼントレをした方ではないか?。

それでも、アイゼンを履いて、凍った雪の急坂を下るのは恐ろしい。「登りよりも降りが難しい。降りを考えて登る」と教わった。

→09:00頃、単独行の青年とすれ違う。単騎で、(おそらく)短時間であがってきた青年の勇気と体力に感心する。冬山登山は、「体力・スピード・技術」に尽きると伺ってるけど、(我々のように)エバーグリーンな若い心を持つ事も、とても重要な事であろう(笑)。

その後アイゼンを外し、壺足で下山。→10:10 山毛欅尾山頂。

雪は柔らかく溶けている。数日ぶりの下界は、めっきり春であった。はやる心で転がり落ちるように下山する。下山口付近の雪はもう腐っていた。

12:20 下山/駐車場着。後は、一里野温泉で汗を流し、快男児emoさんの、「快速コンコルド号」に乗って帰神だ。→20:15 西宮北口着。今回、同行いただけた素晴らしい、そして絶対に変人に違いない皆様に、心から感謝いたします。