山行報告書

神戸勤労者山岳会

1参加者 名児耶、大石、井谷

2山域・ルート 南八ヶ岳(阿弥陀岳北稜、赤岳西壁主稜登攀中止)

3交通手段  

4行動記録

 入山日2006年12月28日  下山日2006年12月30日

 第1日(曇り、夜雪)6:30神戸→(車)→11:30美濃戸12:30→15:30行者小屋、幕営(行動3時間00分)

 第2日(午前中雪のち曇り)(起床)5:00行者小屋7:00→11:30地蔵尾根鎖場終了点付近11:40→12:30行者小屋13:30→15:30阿弥陀岳北稜ジャンクションピーク15:40→16:30行者小屋、幕営(行動7時間30分)

 第3日(晴れ)(起床)9:00行者小屋→11:00美濃戸11:30→(車)→17:30神戸(行動2時間00分)

5山行中の問題点・事故に繋がる要因

予定のルートで行動出来たか 予定ルートをはずれた場合はその理由

予定していた阿弥陀岳北稜、赤岳西壁主稜は、降雪直後による雪崩の危険とメンバーの指先凍傷の危険のため中止した。

 事故の繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す

1) 雪崩の危険:出発の前前日の26日に南岸低気圧の影響で湿った雪が降り、赤岳周辺で50cmから70cmの積雪があった。 また、入山日の28日晩に今度は、冬型気圧配置と寒気の南下による乾いた積雪が20cmから50cmあり、各所で2重の弱層を形成していた。 赤岳主稜のアプローチ及び阿弥陀岳北稜のアプローチ及び阿弥陀岳下降路で雪崩の危険があったため、29日は、地蔵尾根経由赤岳ピストンの一般ルートに変更した。 地蔵尾根上部まで行って雪崩の危険が思ったよりも低そうだと思った。 上部弱層は、踏み込むと潰れるため危険箇所のトラバースをせず、直登すれば危険を軽減出来ると判断し午後から次の日の登攀に備えるため阿弥陀岳北稜のアプローチにトレースをつけに行った。 赤岳文三郎道の中岳分岐点右手に一部雪崩の跡があったが、中岳沢斜面や阿弥陀岳北稜斜面には、雪崩跡はなかった。

 2) 凍傷の危険:29日、地蔵尾根経由赤岳ピストンのルートを午前7時頃に出発、ルート前半部は、わずかにトレースが残っていたが、中間部よりトレースが全くなかった。 雪が降る中、膝から腰のラッセルとなる。 地蔵尾根上部の鎖場と思われる付近で(鎖は、雪に埋もれていた)登攀具をつけロープを出す。 鎖場を抜け、強風が吹く上部でメンバーの一人が指先の強い痛みを訴える。 3層のグローブを全て乾いたものに付け替え、ツエルトで暫らく休憩するが、思ったより回復しないので撤退することにした。 赤岳展望荘まで、10から15分程の地点であったが、強風の中を歩かねばならないため、安全を取り行者小屋に引き返す。 行者小屋でストーブにあたり暖かい食事を取ると指の感覚も戻ってきた。 感覚が戻ったので、午後から阿弥陀岳北稜ジャンクションピークまでラッセルしてトレースをつけたが、樹林帯の中のルートだったため強風には当たらず指先も午前中のような問題は起こらなかった。 しかし、テントに戻り夕食の最中に手先の感覚がないことに気がついた。 凍傷が進んではいけないので翌日、即下山することにした。 下山後、温泉に入り、指先の感覚が戻ってきたことを確認した。

 パーティーで山行中の事故に繋がる要因について山行後検討したか 

1) 入山日の検討及び冬型気圧配置初期の八ヶ岳の気象:雪崩も凍傷の危険も28日の入山を一日ずらせば回避することが出来たと思う。 出発前から26日から27日かけて南岸低気圧による多量の降雪の可能性、29日に冬型気圧配置と寒気の南下が強まることによる降雪は、事前に分かっていたことなので、次回から調整するようにしようと思う。 30日は、冬型の気圧配置が弱まり、また寒気が北上したため快晴となった。 今回、冬型配置初期は、内陸部である八ヶ岳でも結構雪が降ること(今回は、一晩で20−30?程度)が確認できた。 また、寒気が南下してきた時の八ヶ岳(予報では、輪島上空5500M付近がマイナス36度以下)は、気温が非常に低く、濡れたグローブがなかなか乾きにくいこともよく分かった。

 2) グローブの取り扱い:今回、雪がついたインナーグローブをオーバーグローブの下につけていたことが凍傷になりかけた一番の原因と思われる。 アイゼン装着や登攀具準備の時にオーバーグローブを外して、インナーグローブで作業したためインナーグローブに雪が付着した。 他の山域では、行動中に濡れたインナーグローブも体温で乾くようだが、寒気が南下してきた八ヶ岳は、予想以上に気温が低い上に風も強いため、思ったほどにインナーグローブが乾かなかったようだ。 対処方法としては、面倒ではあるが、作業用のグローブと行動用のグローブを分けて、行動用のものは絶対に雪が付かないように工夫することが良いと思う。 今回、この方法を実践していたメンバーは、指先の冷えの問題は、ほとんど無かった。

 その他

今回、目的のルートを登攀できなかったことは、残念だったが、気象及びグローブの取り扱い等で貴重な経験を積むことが出来た。

 報告者氏名 名児耶