山行報告書

神戸勤労者山岳会

 

1参加者

 増田、千賀

2山域・ルート

 第1日目 美濃戸口→行者小屋→阿弥陀岳北稜→阿弥陀岳→中岳→文三郎尾根→行者小屋

第2日目 行者小屋→文三郎尾根→赤岳主稜取付き分岐→赤岳主稜→赤岳→文三郎尾根→行者小屋→美濃戸口

3交通手段  電車    バス

 自家用車

4行動記録

 入山日2006年12月30日早朝/下山日2006年12月31日夕方

30日 美濃戸口→行者小屋→阿弥陀岳北稜→阿弥陀岳→中岳沢のコル→中岳沢→行者小屋

快晴 阿弥陀岳山頂は無風 行者小屋での気温−14℃ 

31日 行者小屋→文三郎尾根→赤岳主稜取付き分岐→赤岳→地蔵尾根→行者小屋→南沢小滝→

美濃戸口

快晴 赤岳山頂付近は風速10m/s 行者小屋での気温−10℃

5山行中の問題点・事故に繋がる要因

a予定のルートで行動出来たか 予定ルートをはずれた場合はその理由           

第1日目の阿弥陀岳から行者小屋に戻る際、予定ルートの文三郎尾根ではなく中岳沢を降りた。阿弥陀岳山頂到着が15:00であったことと、中岳沢の雪の状態が良くしっかりとトレースもできていたことから、時間を短縮するためにルート変更をした。

第2日目の赤岳主稜を変更し、赤岳山頂、地蔵尾根経由のラウンドに切り替え、行者小屋から美濃戸口へ戻る途中にある南沢小滝でアイスクライミングを行うことにした。文三郎尾根の赤岳主稜取付き分岐に到着したときに、2組のパーティー(5人、2人)が順番待ちをしており、主稜には4組のパーティー(3人、3人、3人、3人)が取り付いていた。先頭のパーティーはトレースがないため苦労している様子で、さらに、支点の場所を間違えてクライムダウンをするなど時間がかかりそうだったため、ラウンドとアイスクライミングに切り替えた。

 

b予定の行程どおり行動出来たか 行動予定と異なった場合はその理由

上記の通り

 

c事故の繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す

1.二日目の地蔵尾根から下っている途中の急斜面で、ハーネスに着けていたヌンチャクのカラビナに、後ろ足のアイゼンの爪が引っ掛り足が前に出ず、バランスを崩して雪の上に膝から落ちた。アイゼンで急な斜面を登る場合もそうであるが、ヌンチャクをハーネスに付けているとアイゼンの爪がカラビナに引っ掛りやすいため、ヌンチャクやアイスフック等の装備類は肩にかけるギアラックに付けていた方が良いように思う。

 

dパーティーで山行中の事故に繋がる要因について山行後検討したか 

 上記の通り

 

eその他

<山行記録詳細>

12月29日 

ここ数日間の雪で登れるかどうかわらないが、とりあえず行ってみてダメだったら南沢小滝でアイスクライミングをしようと言いながら西宮今津を20:40出発。二人ともアイスクライミングは全くしたことはないが、バイルが個人装備で1人1本あるから、トップロープさえ張ることができればこの2本を使ってできないことはないとノリノリで決定。1:00美濃戸口に到着すると夜空に雲はなく月や星がはっきりと見えた。

 

12月30日

朝7:00美濃戸口を出発する際、テレビ局のカメラマンから千賀さんに「ザックを背負うところを撮影させて下さい」とオファーがあり、千賀さんは「ヨロヨロした姿で良かったら」と快諾。神戸労山もテレビ取材を受けるほどメジャーに。テレビ取材もあり天気も快晴で気分良く雪景色の樹林帯の中を行者小屋に向かう。8:50下山してきた名児耶パーティーと出会う。悪天と大量の降雪で登れなかったらしい。時間が気になっていたので、とりあえず先を急ぐことに。10:30行者小屋到着後、テント設営して登攀の準備をして北稜へ向かう。天気は、雲が全く見当たらないほどの快晴で、見上げて見える白い色は全て雪である。取付く尾根を間違えて少し引き返したりしながら13:15ジャンクションピークに到着。ここから第1岩稜を登るが、岩が露出しているところはなく、ダケカンバの木は半分ぐらい雪に埋もれていた。傾斜はかなり急ではあったが、踏み後もしっかり付いていたためノーザイルで登った。

次の第2岩稜の1ピッチ目は左側から短い岩溝を登る。トップのビレイは岩溝から少し下ったところにハーケンが1本あり、これにセルフビレイを取るとともに、雪面に打ち込んだバイルでバックアップを取って行った。岩の上にはたっぷり雪が載っていてしっかりと掴めるホールドがなく、バイルを雪に打ち込んでバランスを取りながら越える。岩溝を上がってすぐにボルトが2本あったが、そこを通過して次の広いテラスにあるボルト2本でピッチを切る。約45m。ビレイ解除の合図は、他のパーティーの記録を参考にして片側のロープを5m程度引く方法で行った。この方法はビレイヤーにはとても分かり易かったようだ。千賀さんがフォローで登ってくるが予想外に早く、ビレイが間に合わないほどだった。この千賀さんの登りでモチベーションがさらに上がった。やはり登攀はテンポも大切だと感じた。

2ピッチ目は、ボルトの横に打たれているハーケンでランニングを取った。出だしの短い垂壁は、足を置く場所はすぐに見極めることができたが、手のホールドとして安定したものがなく、雪に打ち込んだバイルでバランスを取りながら登った。垂壁を登るとナイフリッジの通過となるが、以外に短くトレースもあり簡単に越えることができた。ナイフリッジを越え少し登った広い稜線でピッチを切る。ここは支点がないので、バイルとピッケルを雪面に埋め込んでセルフビレイを取り、腰がらみでセカンドを確保した。このピッチでも、フォローの千賀さんは難無く突破してきた。この2ピッチ目の終了点でロープを片付けて、少し急な雪壁を登ると阿弥陀岳頂上に到着。到着時間が15:15と比較的遅かったためか山頂には我々だけで天気も快晴であったため、富士山、南アルプス、中央アルプスなどの冬山の景色を満喫することができた。

阿弥陀岳の頂上から中岳沢のコルに向けて急な雪面を下る。トレースもあり特に難しくはなかったが、一部バックステップで降りた方が安全と思われる急なところがあった。中岳沢のコルからは、中岳沢の雪の状態とトレースがしっかりとついていることから、中岳沢を降りて行者小屋に戻ることにした。中岳沢を下っている途中に、雪崩防止用と思われる柵のようなものの上部が雪面から出ているのを見た。

16:20行者小屋に到着し登攀具を片付け、食事の準備の前に北稜成功の乾杯をした。とは言うものの千賀さんは飲めないので、ザックに入れて持って上がったビールを一人で飲んでいた。寒かったが周囲の雪景色が素晴らしく、実に気分のいい酒だった。食事は各自持ち寄ったレトルトとスープ春雨という慎ましいメニューであったが、酒のつまみは、するめ、鮭とば、めざしと豊富だった。千賀さんも梅酒で宴会に参加。つまみの中でも千賀さん調達の鮭とばは格別で、そのままでは皮が硬くて噛み切れないが、火であぶると皮が柔らなくなってサクサクとしてとてもおいしかった。この鮭とばを千賀さんは前もって味見をしていたそうだ。この酒のつまみまで事前に試食する研究熱心さには脱帽である。酒とつまみで腹がいっぱいになったので9時頃就寝した。

 

12月31日

3時起きのパーティーの騒がしさで目が覚めたが、それを聞きながら5時過ぎまでシュラフの中でごろごろしていた。5時過ぎに千賀さんに声をかけ起床。水と朝食のラーメンを作る用意に取りかかる。今回ガスヘッドとボンベを2個ずつ持っていたため、水を作りつつ食事を作ることができ、時間をかなり節約することができた。食事を済ませて直に登攀の準備をして7:15出発。今日も快晴である。

文三郎尾根を登っていると、赤岳主稜に取り付いている先頭のパーティーが見えた。まだ取り付いたばかりのようだった。8:14文三郎尾根の赤岳主稜の取付きへトラバースする分岐に到着。二組のパーティー(5人、2人)が順番待ちをしていた。主稜には、4組のパーティー(3人、3人、3人、3人)が取り付いていた。先頭パーティーのトップは、トレースがないため深い雪に苦戦している様子でペースが遅かったため、主稜は次回に持ち越すことにして、ラウンドとアイスクライミングに変更した。その後、文三郎尾根を赤岳目指して登りながら主稜のルートを確認していると、先程の先頭パーティーのトップが、3ピッチ目の終了点を間違えて行き過ぎてしまい、岩を乗り越している途中でロープがいっぱいになって動けなくなっていた。トップはセカンドに向かってロープを解いてと叫んでいたが、当然却下されたようで結局クライムダウンしていた。これはかなり待たされそうだと、主稜に取り付かなくて良かったなと千賀さんと話をしながら、多くの登山者とともに赤岳山頂を目指して登った。

赤岳山頂へ向かう道は雪がしっかりと踏まれていて、夏の登山道を歩いているような感じだった。9:30赤岳山頂着。風が少し強かったものの、360°の大展望を満喫することができた。赤岳山頂から横岳方面に降りて地蔵尾根を下った。地蔵尾根を下っている途中で1頭のニホンカモシカに出会った。10:50行者小屋に着くと、直にテントを撤収して南沢小滝に向かった。

13:15南沢小滝着。小滝は登山道から分かれて5分程度歩いたところにあった。小滝には既に2本のトップロープが張られていて登れるところがなく見学だけしようと話していたら、1組のパーティーがもう終わるからどうぞとルートを空けてくれた。しかも、トップロープのセットをしている間に、千賀さんがそのパーティーと話をしていると親切にもトポ図まで譲ってくれた。トップロープのセットが終わって実際に登ってみると、氷が壊れるばかりでバイルがなかなか決まらない。決まったと思ったら今度は抜けなくなって難儀した。2時間半ほどアイスクライミングを楽しんだあと、美濃戸口に向かって出発。途中の美濃戸山荘で無料のお茶を飲んでいると、山荘の人が小皿に入れた野沢菜漬けをくれた。17:15美濃戸口到着。帰りは諏訪SAで温泉に入る予定が、高速に入ると直に事故渋滞で1時間程度足止めされたため、温泉はあきらめて食事のみをして帰った。

 

報告者氏名 増田  2007年1月3日