山行報告書
神戸勤労者山岳会
1参加者 増田、名児耶、大石、千賀
2山域・ルート 南八ヶ岳(南沢小滝アイスクライミング、赤岳西壁主稜登攀)
3交通手段 車
4行動記録
入山日2007年1月27日 下山日2007年1月28日
第1日 1月26日(金)(雪)22:00西宮→(車)→03:00諏訪南IC手前のPAで幕営(行動0時間)
第2日(曇り後雪)(起床)諏訪南IC手前のPA5:30→(車)→7:00美濃戸8:00→9:00南沢小滝(アイスクライミング練習)14:30→15:30行者小屋手前、幕営(行動9時間30分)
第3日(晴れ)(起床)3:00行者小屋手前5:45→7:00赤岳主稜取付7:30→13:15赤岳山頂13:30→14:30行者小屋手前15:30→16:30美濃戸17:00→(車)→22:00西宮(行動10時間30分)
5山行中の問題点・事故に繋がる要因
予定のルートで行動出来たか 予定ルートをはずれた場合はその理由
予定通りだった。
事故の繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す
アイゼンひっかけによる転倒:
赤岳主稜3ピッチ目を名児耶がリードしたが、中間の岩場の手前でピッチを切るべきところ、支点を見つけることができなかったため、支点を求めそのまま岩場を登った。 登りきったところでロープがいっぱいとなりスタンディングアックスビレーで確保支点をつくり、千賀さんにコールした。 その後、千賀さんが岩場下まで来たが、雪稜上の不安定な確保だったので、しっかりしたポイントまで更に登りたい旨を岩場の上より覗きこみながら伝えようとして雪稜を少し下った。 その際、左足のアイゼンの横爪を右足のスパッツにひっかけてしまい左側に回転しながら、背中を下にして転倒した。 転倒した際に、スタンディングアックスビレーにかけていたロープを2本同時につかみ、それ以上の転落は、かろうじて防ぐことができた。 セルフビレーは、取っていなかった。
パーティーで山行中の事故に繋がる要因について山行後検討したか
アイゼンひっかけによる転倒: 山行後、原因および今後の対策について以下のよう検討した。
原因1)不十分なルート研究:第3ピッチは、中間の岩場手前で切るべきことを事前に聞いていたが、良い支点をすぐには見つけることができなかったため、岩場上に良いピナクル等があるだろうと安直に考え岩を登ってしまった。 結果として不安定な雪稜上の確保となり転倒につながる要因を作ってしまった。 雪と岩のバリエーションの経験が浅いことを考えると、もう少し丁寧に事前ルート研究をして、支点ポイント等を把握しておくべきだった。 ちなみに、後続の増田パーティーは、岩場手前の支点を見つけている。
原因2)50mピッチの感覚不足:原因1ともつながるが、今回は、50mロープ長さの感覚がつかめず、いっぱいとなり、不安定な確保を強いられる結果となった。 特に緩斜面でのロープ長さ感覚を鍛え、ロープいっぱいになる前にピッチを切れるようにしたいと思う。
原因3)狭い場所での注意不足:今回、狭い場所でロープを踏まないように足を動かし、アイゼンひっかけ転倒に至った。 今後は、狭い場所、不安定な場所では、足のさばき方により注意を払おうと思う。
原因4)自己ビレーなし:スタンディングアックスビレー点を作成した際、もう一本のアックスで自己ビレー点も作ろうとしたが、すぐ上の雪面は、固くアックスが縦にうまくささらなかった。 雪稜自体は、平らでありそれほどの危険を感じなかったことと、後続のパーティーもすぐ後ろに来ていたので、自己ビレー支点作成は諦めた。 今回は、たまたまスタンディングアックスビレーに掛けていたロープをつかみ転落を防ぐことが出来て幸いだった。 今後は、いろいろなパターン(アックスのピックやスノーバーなど)で素早く自己ビレー支点を作る練習をしようと思う。
その他
今回は、週末2日間の短い日程ながらとても充実した山行を楽しめた。 入山初日は、美濃戸まで車を乗り入れ、行者小屋に向かう途中で南沢小滝に寄り、アイスクライミングをした。 僕と大石さんは、初アイスクライミングだった。 増田さんが新しく買ってきたアイススクリューを使いリード登攀して、滝の上の支点にトップロープを張ってくれた。 アイゼンの前歯で踏ん張ったふくらはぎも、アックスに体重を預け過ぎた腕も、赤岳西壁主稜本番前だと言うのにもう筋肉痛に成りかけてしまった。 しかし、アイスクライミングは、なんだか氷に張り付いた蟷螂になったような気分になり愉快だった。 また、是非遊んでみたいと思う。 夜は、行者小屋手前の開けたところに泊まった。 雪を踏みつけても硬くならないので60−70cm程度堀下げてスノーピットを作り、その中にテントを張った。 なんだか穴の中の棲み処みたいで心地が良い。 千賀さんは、長い時間をかけて今まで見た中で一番豪華な野外トイレを作ってくれた。 テントに入り、酒を飲みながら例のサケトバをいただいた。 噂通りおいしかった。 火にあぶると一層おいしかった。
翌日、3時に起床する。 夜のうちに少しだけ雪が降ったようだが、年末のような大雪ではない。 風もなく、今度こそ登攀できそうで気持ちが高ぶってきた。 食事して準備を整え、6時前にテントを出発した。 業者小屋のテン場は、人々の声が行きかい、まだまだ出発の雰囲気ではなかった。 赤岳に続く文三郎道を行く。 7時頃西壁主稜取り付き到着。 二人組の先行パーティーがちょうど1ピッチ目に取り付いているところだった。 増田さんの配慮により、名児耶と千賀パーティーが先に行かせてもらうことになった。
1ピッチ目、名児耶リード。 出だしのチョックストーンは、バイルのピックで岩を掴みアイゼンの前爪を利かせて乗り越し、続く斜面はアックスとキックステップでコルまで這い上がった。 右に少しトラバースするとすぐに岩に打ち付けた支点が見えたが、先行パーティーがいたため、手前の岩にシュリンゲをかけて確保した。 2ピッチ目、千賀さんリード。 ボルト支点横の壁の登りやすそうなラインを選んで登る。 4−5m登るとすぐに緩斜面となり、岩が無くなるあたりでピッチを切る。 3ピッチ目、名児耶リード。 2ピッチ目終了点から中間の岩場が見えている。 コンテでもいけそうなピッチだが、万が一のことを考えてスタカットでいく。 中間の岩場でボルト終了点を見つけられないので、良い終了点を求め、そのまま岩を登ることにした。 しかし、登り終わったところでロープいっぱいとなり、雪稜上でスタンディングアックスビレー。 千賀さんが岩の下まできたところで、声をかけようと少し下ったところ、アイゼンを引っ掛けて転倒してしまった。 なんとか、体制を整え、千賀さんに岩場の下でビレーしてもらい雪面を更に上がった。 これが、4ピッチ目でまた名児耶のリード。 雪面左側に大きい岩があり、そこにボルトがあるに違いあるまいと思い登っているとまたしてもロープいっぱいとなる。 少しクライムダウンして右側の小さな岩にシュリンゲをかけて確保する。(後から登って来た増田さんは、絶対この辺にある筈だと雪に埋もれたハーケンの支点を掘りあてた。) 5ピッチ目千賀さんリード。 上部岩場の入り口に向けて雪面を右方向弓なりのラインを引いて登る。 ガイドブックの写真は、大体、雪と岩のミックスとして紹介されていたが、僕らが登った時は、適度に締まった雪の斜面だった。 6ピッチ目、名児耶リード。 本ルートの核心部とされるところだ。 出だしがやらしいと聞いていたが、割りと簡単に登れたため、こんなものかと高をくくっていたところ、その先に手ごわいセクションが現れた。 フェースの右側の雪の詰まったかなり急な凹溝になんとか足をつけてみたが、あまり快適には登れそうもないので引き返して、フェースを登る。 バイルのピックが思うようにかからずプッシングで苦労しながら一段上のところまで上がった。 岩の出っ張りにシュリンゲをかけてランニングの支点を取ろうとするのだが、どこにも良い架かりが得られない。 諦めて進んだところハーケンの支点が現れほっとする。 上部で少々右にトラバースして、先ほどの凹溝の上部に出る。 ここは、ガバホールドで登りやすそうだが、昨日のアイスクライミングの疲れも手伝って、腕が少々パンプ気味だった。 フリークライミングの要領でぶらぶらと手を振り回復させて一気に上のテラス状まで上がった。 テラス状の上方に良い岩が見えたので、そこまで上がりビレー支点を取った。 7ピッチ目千賀さんリード。 5ピッチ目と同じような雪面とその先にちょっとした凹溝が見える。 凹溝を登る際に良いランニングビレーが取れそうもないので千賀さんが躊躇していると、今まで待ちばかりでしびれを切らした増田パーティーが一気に追い越しをかけた。 凹溝の上で岩による支点確保。 8ピッチ目名児耶リード。 簡単なミックスの斜面、ロープを伸ばしすぎないように適当な岩で確保。 9ピッチ目千賀さんリード。 もう、確保はいらない斜面だった。 最後は、目の前、右側に流れる雪面を左に巻いて50m程で赤岳山頂小屋前到着。 登攀道具を片付け終わった増田さんと大石さんがベンチに腰掛けて待っていてくれた。 雲が増え始め悪天の兆候が出始めていたが、登攀中は、風も緩く、とても良い天候に恵まれた。
実は、この日、40歳の誕生日だった。 今まで南八ヶ岳のバリエーションに2回挑戦したが、天候条件などで敗退。 3度目の正直が誕生日で良い想いでになった。 増田さん、大石さん、千賀さん どうもありがとうございました。
報告者氏名 名児耶