二度目の鳳凰三山

吹留 

女性だけでの春山縦走、山中テント泊山行は1年半ぶり・・お誘いをいただいたときは「行きたい!」という気持ちと「ついて行けるかな・・」という弱気な気持ちとが、かなり葛藤していた。鳳凰三山は以前秋に一度行った山、体調がもうひとつだったうえ悪天候で眺望もなく、かなりの急登だった・・あまりよい印象のない山だったが、春山はまた違うかも・・数日考えて、やっぱり行きたい!という気持ちが強く、参加させていただくことにした。不安はいっぱいだったけれど、大阪駅でメンバーと集合すると不安な気持ちが不思議と消えていった。韮崎までの夜行バスは快適で、いつになくよく眠れた。

初日。体調は万全、あとは天気だが、予報では雷雨とか・・GW初日のせいなのか、登山口では県警の方達が登山者の安全のため、装備の点検などをされていた。私たちの装備を見ると、「それだけの装備なら大丈夫、ここの雨は上では雪になるから気をつけて。何かのときのために夜叉神峠小屋の人に挨拶しておいたほうがいいですよ」と見送ってくださった。

ご忠告どおり夜叉神峠小屋の方に挨拶をして、杖立峠へ。途中から雨は雪に変わり、積雪数十センチ、凍った雪の上にさらに積もっていて歩きにくい。アイゼンをつけて歩くが、杖立峠を越えたあたりから心拍数がかなり上がってきた感じがして、さらに歩くと少し頭痛がし、息があがって思ったように歩けなくなる。ペースの落ちた私に、メンバーが体調を心配してくれる。ありがたいと思いながら、なんとか自分で頑張りたいという気持ちもあった。とはいえ、もしもっと悪くなって迷惑をかけたら・・と思い、荷物を分けて持っていただいた。トレーニング不足を後悔。南御室小屋のテント場についても、慣れないオーバーグローブでのテント設営など手間取ってすばやく行動できなかった。てきぱきと水汲み湯沸し荷物整理などこなしていくメンバーの中で自分の要領の悪さにへこむが、楽しみにしていた夕食をみんなでわいわい食べ、おしゃべりに花をさかせるうちに夜もふけ、初日を無事に終えたことに感謝の気持ちで眠りについた。

2日目。昨日とはうって変わって快晴、眺望を楽しめる稜線歩きにはうってつけ。体調もよくなった。巨岩のごろごろする独特の道を歩くにつれ、富士山、北岳、間ノ岳、農鳥岳・・雪化粧の山々が見えて、清清しい。そのつど歓声を上げながら歩いていった。こんないいお天気に恵まれ、こんな綺麗な景色が見られて・・不安に思いながらも、本当に来てよかったと思った。メンバーの助けを借りながら、なんとかこんな所まで自分の足で登ってきたんだなぁ、としみじみする。パノラマを楽しみ、休憩している途中、メンバーの体調が悪くなり高山病ではないかということだった。他のメンバーがてきぱきと対処してくれ、何とかみんなで地蔵岳のオベリスクを間近に見て写真をとり鳳凰小屋のテント場につく。体調の悪いメンバーに対して、経験の少ない自分にはよい対処ができないのでは・・という気持ちが強く、積極的に何ができるのか考えることができなかった。反省点だ。

3日目。快晴。体調不良のメンバーも元気な笑顔が見られるようになり、食欲も出てきた。何とかみんな元気で下山できそうで安心する。鳳凰小屋から御座石鉱泉までの道中は雪山から雪解けの苔の道、落ち葉の積もった秋のような道、ツツジの咲いた春の道・・といろんな季節を感じられた。自分の足で歩くと、そのときそのときの風景や風や日差しが忘れられない瞬間になる。体がよろこんでいるなぁ、という感じ。つらい登りも急坂の下りもこの瞬間のためにあるんだと思う。富士山や八ヶ岳、そして登ってきた地蔵岳に見送られながら、長い急坂を踏みしめて歩く。だんだんと生暖かくなっていく空気に山行の終わりを感じながら下りていくと、たくさんの水仙の花が私たちを迎えてくれた。御座石鉱泉についたのは予定より遅い正午ごろ、帰りのバスの時間に間に合うため急いでお風呂に入る。お風呂からあがって清清しい日の光と風を感じながら、色々個人的に反省点はあったけれど、みんなで無事元気に下山できてよかった、と実感。下山してタクシーを降りたあたりから自分が妙におしゃべりになっていることに気づき、山から下りて安心したんだと、おかしくなった。下山後、茅野で食べたお蕎麦は本当に美味しかった。お天気にも恵まれ、急登でつらいと思っていた鳳凰三山は実は360度パノラマの素敵な山だと思った。

体力も知識も気持ちの強さも・・・まだまだ足りないものばかり、と実感した山行だったけれど、なんとかメンバーのみんなに助けられて無事に大パノラマの春山を楽しむことができました。この機会を与えてくださったことに大感謝です。ありがとうございました。

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鳳凰三山

 鳳凰三山。女性5人でのにぎやかな山行。晴天と北岳〜間ノ岳を臨む大パノラマにも恵まれた。でも、この山行を振り返る時、私にはやはり高山病の出現が頭から切り離せない。山行中の嘔吐はこれで2回目だ。前回は飲酒もあり、その影響かと思われた。でも、今回は違う。パーティのメンバーのサポートにより無事山行を継続し下山することができたが、これがもし不安定な稜線上だったら?もしクライミング中だったら…?メンバーをさらなる危険に曝していただろう。自覚がなさ過ぎる、お叱りを受けた。私は嘔吐した時も高山病と気付かず、睡眠不足でしょうか?などと言っていた。前日、少なくとも5時間は目も覚まさずにぐっすり眠っていたのに。朝は体調も良かったのに。情けない。山行中の行動について振り返り、私なりに今後どうしたらいいか考えてみたいと思う。
 絶えず気遣い、休息を促し、時に笑わせてくださったパーティの皆さまに心から感謝する。オベリスクの前で撮った写真は、大切な宝物の一つになった。いろいろあって、結果万歳などというと無責任だろうか。でも、本当に楽しい山行だった。

【反省&今後】

1メンバーに症状を伝えていない。過信と認識不足。

薬師岳通過時には嘔気を感じザックに横臥していたが、メンバーに体調不良を伝えていなかった。嘔気以外の症状なく、観音岳での嘔吐後もこのままの荷と歩行ペースで歩けるとの過信、高山病に対する認識不足があった。結果、鳳凰小屋へのエスケープルートをとらず地蔵岳に向かい、嘔気増悪、2度目の嘔吐あり、メンバーに荷の分担を依頼、ペースダウンにより小屋到着時刻が遅れた。

⇒事前トレーニングの不足
⇒高所での体調不良は、第一に高山病と考え、判断能力が落ちていることを認識しておく。体調不良について、メンバーにできるだけ正確に症状と、どう行動すればよいと思うか自分なりに考える対策を伝える。「高山病の際は症状がある限り、登高を続けてはいけない。」この原則を守る。登高を続ける場合のメンバーに対するメリットとリスクを十分に話し合う。

2休憩・水分・行動食のとり方。

嘔気出現後は、休憩毎にザックに横になって休んでいた。ヤッケなどの着用で休憩中も寒さを感じることはなかった。ゆっくりとしたペースで、息切れを感じる前には休むような頻回な休憩がとられた。行動中、1800mlの水分摂取を目安に準備していたが、嘔気出現後はほとんど飲めなかった。行動中の水分摂取は600〜800ml。1日トータルでは2000~2500ml程度の摂取。行動食は、ブドウロールパン2個、乾燥マンゴー、ウマイカ、飴。好物でもチョコは食べられず、メンバーにもらったレモン味の酸味のある飴がとても美味しかった。

⇒休憩を臥位でとったことで、呼吸が浅くなったかは不明。休憩時はザックに腰掛けるなど座位での楽な姿勢で意識的な深呼吸を試してみる。
⇒まだまだ歩ける、より前の状態で定期的に休憩をとっていく。今回、嘔気増強後も歩けたのはこの為だと思う。自分では判断しがたくメンバーの配慮がありがたかった。
⇒必要量には達しなかったが嘔気出現後も、温かい湯であれば少量ずつ飲めた。テルモスはやはり必携。
⇒行動食。体調不良時は、しっとりして味の薄い物、酸味のある物がよい?工夫していく。

3これから。

高山病対策として本や雑誌には、有酸素運動のトレーニングにより最大酸素摂取量を高めること、事前の高度馴化を図ること、ダイアモックスやイチョウ葉エキスの服用、あれば貧血の改善などが紹介されている。身体の予備能が低く安易な薬物使用は慎まなければならないが、トレーニングなどできることからしていきたいと思う。