北岳草を見に行こう!!! H19年6月28日〜7月1日 馬河直美 |
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今回の山行は、忘れられない山行になった。北岳草を見に行くという目的のため、ルート検索に苦労したことや、梅雨の時期で天候が心配だったこと、6月下旬をねらって休みを取ったが、近年の温暖化で北岳草の開花時期が早まっていることを知りがっかりしていると、 今年は積雪量(残雪)が多くて開花が遅れていると聞き、期待に胸を膨らませたこと、そして、初めてのビバークを経験したこと。 第一日目は、北沢峠に着いた頃から小雨。大樺沢のコースは雨露で緑が美しく、沢の流れも多少勢いが良いくらいで美しい景色の中を楽しんで歩いた。 右俣のコースと八本歯のコースの分岐の手前で、雪渓となり、アイゼン装着。 この時、下山してきた男性に右俣のコース状況を確認。雪は上まであるが、ルートはわかりやすく、歩きやすいとのこと。 友人も初めてのアイゼンに緊張気味で慎重に一歩一歩進んでいった。 |
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広河原
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大樺沢
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右俣コース分岐
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分岐を確認し、右俣のコースを進んで行き、雪渓が分かれる毎に、一番大きくわかりやすい雪渓を進んでいった。一時間歩いた頃から雨量も増し、斜面も急登になってきた。雷が鳴り、不安になった。このまま進んで良いのか?しかしルートはわかりやすいはずだし、上を目指せば稜線に出ることは間違いない。間違ったルートを進んでいるとは思わず、上を目指していた。小さいけれど落石もいくつかあり、さすがに危険を感じ、雪渓を避けるべきだと判断し、右(北)へ反れる道を進む。この時、地図とコンパスを合わせていなかった事を後悔する。現在地を見失ってしまった。わかり易い雪渓を上へ上がれば稜線に着くという安易な考えを反省した。地図では右俣のコースは途中で右(北)へ反れているが、私たちは、直進していることになる。コースタイムで歩けていたので、稜線に出れば小屋には着けるという思いで、雪渓を避けるように進んでいくと、ハイマツ帯に出た。ここまで来れば稜線はすぐそこのはず。高度も2900m辺りまで来ている。しかし、雪渓でない場所は歩きにくく、本来のルートであろう右(北)へ向かいながら上を目指して進んで行った。一面ガスで視界不良の中を進んできたが、一時稜線らしき景色が見えたことと、ハイマツ帯の高さまでいることを思うと、何とかたどり着けると思っていた。雪渓の先のハイマツ帯で先に進めなくなってしまい、時計はいつのまにか17時45分を示していた。 ハイマツ帯の中の大きな岩影で、どうする?と話し合い、この地点で上には行けない。移動し雪渓を渡るのは危険。雪渓を下山するのは危険。消去法でビバーク???まさかのビバークが残された。 日没の時間を考えると、ビバークするならまさにこの岩影しかないと思える場所にいた。 あの岩のおかげで、風を避け、ツェルトを張れた。いつの間にか雨が止んでいた。着替えをしていると、一瞬視界が開けた。私の心配をよそに、友人は絶景を見て喜んだ。友人はビバークって何ですか?と言った。日本語にすると何だろう、危険を避けるために停滞して過ごすことと伝え、「ごめんね、こんな思いさせて!」と言うと、「とんでもないです、初体験です。こんな経験させてもらってありがとうございます。」「・・・」怖いとか、どうなるのとか、大丈夫?とか不安な発言をしないでいてくれた友人に救われた。着替えを済ませ、ツェルトに入ると、「こんなことになるなんて・・・あの時コンパスを合わせておけば・・・。あの時立ち止まってルートを確認しておけば・・・」と反省の嵐が吹きそうになり、「反省と謝罪は下山してからにしよう。今はいかに安全に身体を休めるかを考えよう。」と、不安を払いのけることにした。 |
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初ビバーグ
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今夜のメニューはイタリアン???なんて浮かれる気分にはなれず、それでも、カロリーを取ろう、身体を温めようと、スープとアルファー米とお菓子を食べながら、会話を楽しんだ???。何を話したかは覚えていない。 「明日どうする?」「晴れたら稜線を目指そう」「天候不良なら何時まで様子を見る?」「稜線目指して、ダメなら下山することを考えると、9時までだね。」いろいろ話しているうちに、北岳草に会えなくてもいいからどうか無事に下山させてください。と思った。で思って言った。「北岳に来ただけだね?」これがうけた。高山病かな?緊張感を一瞬忘れて笑った。宮永さんが、「来ただけちゃうやん、ビバークしたやん」と言った。また笑った。ホントだ、すごい経験してるなと思った。お腹がふくれて、身体を温めて、笑った後、眠くなった。心身共に疲れていたと思う。こんな状況で眠れそうな私達ってすごい。もちろん快適ではなかったがウトウトしていた。シュラフカバーが一つしかなかった為、友人に使ってもらい、山女の私と宮永さんが両端で寝ることにした。身体が少しずつ冷えてくる。宮永さんが脚の寒さを耐えていることがわかり、友人は足に巻いていた新聞紙を渡そうとするが、宮永さんは大丈夫といい、友人に少しでも寒い思いをさせないように気づかってくれた。なんていい人なんだろう・・・と涙が出そうになっていると、思い出した。「いいものがあった。レスキューシート!」私も宮永さんも持っていたのでそれを身体に巻いた。温かいとは言えないが、寒さは随分感じなくて済んだ。こうして、気温はどのくらいだったかわからないが、なんとか低体温にならずに朝を迎えることが出来た。 「どうか三人で無事下山させてください。」「三人で無事下山出来なければ、もう山に行こうと思えないのだろうな」「三人で無事下山出来なければ、もう山はやめます。」と思っていた。そして、こんな風にあっけなく人生の最後を迎えるものなのかな?とも少し思ってみた。山で死ぬ人より、残された人のほうが大変だな。とも思った。初のビバーク体験でいろんなことを思った。 2日目、3時になり、動き始めることが出来、少しホッとした。 朝食の雑炊を食べながら、天候回復と北岳草に会えることを願った。一方で一刻も早く無事下山したい気持ちもあった。 4時を過ぎると、明るくはなってきたが、一面ガスに覆われて視界不良。5時半、宮永さんが外を見て叫ぶ。目の前に、鳳凰三山が見えている。北岳の稜線も見えている。 急いで荷物をまとめる。 ビバークした岩の上に登ると、信じられない光景が!!! 富士山と小屋の屋根が見えていた。 富士山でっか〜い!!!あれれ、何で小屋がこんなところに??? あらら・・・私達、直登してたんだ!?!?。岩の上のハイマツは丈が低く歩いて抜けることが出来た。ハイマツを超えて一歩一歩雪渓を登る。稜線に出た。小屋はすぐそこ。小屋の前で富士山をバックに写真を撮る。三人で喜んだ。7時前に小屋に着いた私達を、小屋の人が温かく迎えてくれた。「私達、そこの岩でビバークしていたんです。」「無事でよかったね。」今年のビバーク組一番のりらしい。無事を祝って三人でおしるこを食べた。今年のおしるこも一番乗りだと小屋の人に言われた。 |
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富士山だー
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肩の小屋到着
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肩の小屋より富士山
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お汁粉で乾杯
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北岳山頂
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休憩した後、北岳草を見に行った。今が満開らしい!!! こうして三人が無事でいることが何よりだけど、小屋にたどり着けたことがうれしい、北岳草に会えることがうれしい、昨日の雨と視界不良がなければ小屋に着いていたような気がするが、それがあったから天候回復したことが有り難く、すべてがうれしく感じる。 北岳草の咲いている位置を確認し、分岐を超えて白い花を見つける。1時間半くらい北岳草を眺めたり、肌寒い空気の中に身を置いてボーっとしていた。 <世界でもここでしか見られない花があります。北岳にしか咲かない幻の花です。2万年前の氷河期北方の大陸からやってきました。北岳は7000万年前地殻変動によって海底から隆起して生まれました。最近の研究でこの石灰岩が南太平洋のイースター島付近の海底で作られたことがわかりました。遥かな時をかけ、海底を移動し、北岳の山頂にまで押し出されたのです。南の海から運ばれた岩と北方の大陸から伝わった花が北岳の頂で出会ったのです。>・・・遥かな時の流れと地球が動いていることを実感したくて、北岳草に会いたかった。 満喫して小屋に帰る途中、北沢峠のバスが一緒で昨日は白根御池小屋に泊まられた二人(写真を撮られていて、高山植物に詳しい人だった)にお会いした。私達の撮った写真を見てもらい、白い花は北岳草ではないことがわかった。ハクサンイチゲだった。あれれ???あんなに感動して浸っていたのに???ハプニングだらけの私達(笑)。二人の後について、再び?今度こそ?北岳草を見に行った。ちょうど北岳草に出会えた頃から視界が開けて、間ノ岳がくっきり見えた。北岳草を見るために、想像以上に苦労した。北岳草も美しかったが、私達にとってハクサンイチゲは北岳草に負けないくらい愛おしかったので、宮永さんの提案で、私達の北岳草と呼ぶことにした。 その日は、甲府からのルートが開通した日だったので、小屋は満員だった。窮屈ながらも毛布に包まり、身体を伸ばして眠れることが有り難かった。身の危険を感じずに眠れることがうれしかった。 3日目、翌朝、もう一度富士山を見て下山したかったが、姿を現してはくれなかった。 なおさら、ビバークした日の朝に見た富士山は幻かと思うくらい感動的だったと思う。 下山は草すべり〜白根御池小屋のコースにしたが、このコースもかなり急登で、今だから言えるが、この急登より、雪渓を登ったほうが良かったかもね。なんて言ったりした。(懲りない人達だ。) 下山後友人に、「よく歩いてくれたね、怖い思いをさせてごめんね。」と言うと、「いいえ、荷物ほとんど二人に持ってもらって、私は二人についていくのに必死でしたから。途中、私の荷物まで持ってもらって、悪いな〜と思いながらも、私がバテテ迷惑かけたらいけないと思って甘えてしまって。私がいなければもっと早く歩けていたと思います。荷物持ってもらって、ゆっくり歩いてもらって、ありがとうございました。お二人がいてくれたから大丈夫だと思っていました。」と言っていた。 自分の限界を予測し、過信しない謙虚な姿勢は大切だと実感した。ビバークした夜、もし、友人が怖がったり、不安な様子だったら、迷わず北岳草を見ずに下山していたと思う。 喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、このことだと思うが、「北岳草も見れて、富士山も見れて、三人無事下山出来たっていうことは、また山においでねって言うことだよね。」と思った。 心身共にタフな友人と、友人のために常に気遣って声をかけたり、着替えを貸してくれたり、荷物を持って助けてくれた宮永さんに感謝の気持ちでいっぱいだ。 今回、一人でも北岳草を見に行くつもりでいたが、二人がいてくれたからこその北岳だったと思う。 不思議だけど、ビバークすると決めてツェルトを張る間、雨が止み、一瞬視界が開けたこと。翌朝行動を開始した時、富士山が美しく見え、小屋も見えたこと。北岳草に出会うときに、ガスがスーッと引いて景色を楽しめたこと。ビバークしたあの大きな岩は私達を守るために存在してくれていた気がする。 ちょっと、感傷的になりすぎか???いやいや、タイミングが良すぎる! 山の神様に見守られて、貴重な経験をさせてもらった気がする(笑)。 山で得た感動は宝物。山で気づかされた自分の未熟さは自分を成長させてくれる。 そんなことを実感した山行だった。 山の神様と、宮永さんと、智ちゃんに感謝します。 今回北岳に行く事が出来た全てのことに感謝します。 |
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私たちの北岳草(ハクサンイチゲ) |
北岳草(本物)
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北岳草と宮永さん
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満開の北岳草と一緒に | ||||||||||||||||||||||||||||||
昨日の雪渓を眺める
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帰路の広河原にて
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茅野でお蕎麦
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