五竜〜鹿島槍ヶ岳縦走 記:宮永 きれいな双耳峰の鹿島槍ヶ岳、山行の随所で、遠くからでもわかるその美しい姿を眺めながら、あの耳を歩いてみたいと思っていた。先月、八方尾根〜白馬三山を縦走した時、五竜岳の雄姿も印象的だったので、今回は八方尾根〜五竜〜鹿島槍へと縦走することにした。さわやかな秋晴れの中、雄大に連なる山々や、錦秋に色づく山腹の木々を眺めながらの、楽しい稜線歩きとなった。 |
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10/6(土)晴れ 前夜、大阪からの急行「きたぐに」より電車、バスを乗り継いで、リフトで八方尾根の第1ケルン着、9:20歩き始める。草紅葉や、黄色く色づくダケカンバがきれいだ。朝はガスがかかっていたが、八方池でのんびりと休憩しているうちに青空になり、池に唐松〜白馬の山々がきれいに映ってきた。五竜岳、鹿島槍ヶ岳もきれいに見える。眺望が良いとパワー倍増、唐松山荘で休憩をとり、ごきげんで歩く。今日は特に危険な所はないと思っていたが、唐松山荘から10分ほど登った牛首からは、しばらく岩場が続いたので、滑らないように注意しながら歩く。こちら(唐松方面)から眺める五竜岳は、とてもダイナミックに堂々と聳えていて美しい。ハイマツ帯を抜け、だんだん五竜岳が近づいてくる。15:35赤い屋根の五竜山荘に到着。テント場はいっぱいだったが、なんとか場所を見つけて設営し、夕焼けと星空を楽しむ。 |
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10/7(日)晴れ 今日はコースタイム9時間半の長い道のり。少し明るくなりかけてからの方が歩きやすいだろうからと、4:55出発。しばらく歩くと、だんだん東の空がオレンジ色に染まってきた。もう少し登れば東側が開けて、ご来光が見える。ゆっくり歩こうと言っておきながら、朝日好きの血が騒いで、つい早足になる。途中の開けた場所で、雲海に昇る朝日をゆっくり眺める。とっても幸せなひとときだ。そしてひと登りして五竜岳頂上到着。朝の光に照らされた山々が美しい。鹿島槍ヶ岳、遠見尾根、剱岳、槍ヶ岳、穂高連峰、遠くには富士山・・・大展望をゆっくり満喫した。五竜岳からの下りも、しばらく岩場やクサリ場があるので注意しながら歩く。北尾根の頭を過ぎたあたりからは道も歩きやすくなる。剱〜立山三山が間近に迫り、緑深い雄大な山々に紅葉が映える。大自然の懐に抱かれている感じで歩いていてとても気持ちが良く、お気に入りのコースの1つになった。キレット小屋は9月末までで閉まっていたが、小屋の前で休憩し昼食をとる。 この先は八峰キレット。今回一番の難所かと思ったが、特に怖いと思うところもなく、10分ほどで足場の悪いところは過ぎた。そしてまた快適な縦走路になり、眺望を楽しみながら歩く。鹿島槍の耳が目の前に迫る。まずは北峰、それから南峰へ。「やったーっ、鹿島槍の耳!」双耳の北峰と南峰の間はかなり離れて見えるのに、ゆっくり歩いても30分、とても意外だった。天候に恵まれ、どこもがビューポイントの絶景続き。ゆっくりと眺望を楽しみ、冷池山荘へと下る途中では、ブロッケン現象まで見てしまう。16:35冷池山荘のテント場着。剱岳が目の前に大きく見える、とてもいい場所だ。夕方には剱の奥の雲が鮮やかな紅に染まり、息をのむような見事な夕焼けを見た。盛りだくさんで中身の濃い一日だった。「よく歩いた、よく頑張った!」と、無事ここまで来たことを喜び、「こんなに幸せでいいのかなぁ。神様、ありがとう!」と、大満足の3人であった。 |
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10/8(月)雨 稜線は強風 あまりにも幸せすぎた私たちに・・・、最終日、試練は待っていた。夜中0時を過ぎる頃より、雨と風が強くなる。テントの中にも水がたまり、体でテントを支えてないと、傾いてしなってきそうなほど。内側から体でテントを支えながら、朝食の準備をする。この悪天候に少し不安を抱くメンバーもあったが、「実際の雨や風は、テントの中で感じるほどは強くないよ。雪でなくて良かった。」と言いながら様子を見る。明るくなるのを待ってテントを撤収し、小屋で天気予報とコース状況を聞いてから出発することにする。6:15冷池山荘発。 爺ヶ岳の稜線は強風を受けるし登りもあるので、エスケープして、急だがコースタイムが短く風の当たらない赤岩尾根を下りた方が良いかと迷い、小屋の人に聞くと、「扇沢の方が道は良いが、赤岩尾根の方が1時間半くらい早い」とのことで、どちらが良さそうとは言ってもらえなかった。迷った挙句、扇沢の方が人も多く通るので、予定通り扇沢に下山することにする。爺ヶ岳への登りの稜線で、何度か体が強風であおられて飛ばされそうになったが、道が広いので不安なく歩けた。途中で休憩できるような天候ではないので、汗をかかない程度にゆっくりと歩き続け、種池山荘で小休止。種池山荘〜扇沢の辺りは、ナナカマドやカエデが鮮やかに色づき、とてもきれいだった。時折足を止めて、錦秋の装いを楽しみながら、またゆっくりと扇沢まで歩き続けた。整備された歩きやすい道だった。11:10登山口着。都合よくタクシーが待っていたので、信濃大町駅近くの入浴できる旅館へ案内してもらい、心も体も温まって、楽しい山行を終えた。 今回は、「もし雪が降ったら」ということが最大の不安で、少し緊張して、出発前から高層天気図や寒気予想、現地情報などに注意していたが、雪にあうことなく無事に山行を終え、心に残るたくさんの風景に出会えて本当に楽しかった。山行を自分たちで企画して判断していくことの楽しさと難しさ・・・学ぶこともたくさんあり、その全てを含めて、また山と仲間が好きになった。 |
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