山行感想

先月のいつだったか吉田さんからメールが入った。 雪彦山の温故知新ルートに行きませんかと。 ルートの詳細は、今月の岳人に載っているとのことだった。 温故知新ルートは、その名が表す通り、雪彦山不行岳北壁に拓かれた昔のアルパインルート(逆くの字ルート)を新たにフリー化したものだ。 合計7ピッチあり上部3ピッチは、5.10台前半のグレードがついている。 ちょうど三峰東稜、不行岳南西壁を登り楽しかった余韻が残った後だったのですぐにOKの返事をさせてもらった。 数日前まで雨の予報が出ていたが、直前で天気予報が好転した。 前夜、明石駅で吉田さん、丸尾さんと合流し雪彦登山口にあるキャンプ場で一泊した。 空が白み始めた朝6時過ぎに林道の東屋付近から入山した。 地蔵岳東稜の取り付きまで行き、更にそのまま不行沢を少しつめた遭難碑下で登攀開始した。 1ピッチ目(4級、名児耶リード)遭難碑上から大きくジグザグに登る。残地支点が少ないと聞いて心配していたが、古いハーケンがいくつか残っており、また潅木からランニングビレーをとることも出来た。 ロープの流れが悪くなり、終了点手前のフェース下で一度ピッチを切った。 この最後のフェースは少々傾斜があったので念のためカムでランニングビレーを取った。 2ピッチ目(3級、名児耶リード)1ピッチ目終了点からバンドを少し左側に移動した地点から2ピッチ目が始まる。 ちょっとした岩場を登るとすぐに樹林帯に入る。 樹林帯の踏み跡を左に進むと第3チムニー横の取り付きがあった。 3ピッチ目(4級、名児耶リード) チムニー左のカンテを登った。 昔からあるハーケンに加えてペツルのハンガーボルトが2点ほど追加されていた。 登りきったところにペツルの懸垂下降支点があった。 支点から左側に錆びたリングボルトが連打されたラインがあったがそれは見送り、情報通り支点右側と露岩の間の北壁バンドを登った。 草と泥の狭いルンゼ状のルートで足元が滑りやすく、今回登った中で一番緊張した箇所だった。 少し登るとペツルボルトの終了点があった。 4ピッチ目(5.10a、吉田リード、オンサイト) ここから吉田さんがリードした。 3ピッチ目終了点からきらきらと輝くペツルハンガーボルトのラインが見えた。 ここからがハイライトだ。 大きな声で気合を入れた吉田さんは、危なげなく終了点のある檜に達した。 僕と丸尾さんがフォロー。 一部前傾しているところもあったが、ホールドが思ったよりも大きく登りやすかった。 5ピッチ目(5.10b、吉田リード、オンサイト) 吉田さんは、ここもすんなりと抜けていった。 このピッチはカムが使えるとのことだったが、結局使わなかったようだ。 僕は、一箇所、ホールドを探しているうちに腕がパンプしてワンテンション入れてしまった。 凹角上の左側にクラックがあり、カムを使うとすればここだと思った。 6ピッチ目(5.10a、名児耶リード、オンサイト) 温故知新の中で最も快適と聞いているピッチをリードさせてもらった。 リュックを吉田さんに返して空身で登った。 今回、リードは全て空身でフォロー2人がリュックを背負うスタイルで登った。 登攀中後ろを振り返ると紅葉と地蔵岳岩壁の景色が素晴らしかった。 スラブルートでホールドは小さめだが靴底のフリクションも良く効きとても楽しく登攀できた。  7ピッチ目(3級、名児耶リード) 不行岳の肩からちょっとした岩場を登り、樹林帯でコンテに切り換えた。 暫くコンテで進み、大天井の頭からコルに下り、大天井岳に移るところで5m程の壁に突き当たる。 8ピッチ目おまけ(5.10b、名児耶リード、レッドポイント)5mほどの壁でお助けシュリンゲが掛かっているが、フリーで登ることが目的であったため、吉田リーダーからフリートライするよう指示を受けた。 良いホールドを探しきれず、一度フォールしたが、2回目のトライでレッドポイントに成功した。 この岩の上部で登攀終了した。 ロープをしまい、5分程で大天井岳頂上に到着した。 取り付きから大天井頂上まで5時間弱だった。 あとは、ハイキングコースを辿り駐車場まで戻った。 温故知新は、下部のルートファインディング、上部のフリークライミングが同時に楽しめる面白いルートだった。 特に素晴らしい景色の中で登る6ピッチ目が噂通りとても良かった。 また、登りたいと思う。 吉田さん、丸尾さんありがとうございました。 

 名児耶