山行報告書
神戸勤労者山岳会
1.参加者 西、玉田
2.山域・ルート 八ヶ岳:美濃戸(赤岳・硫黄岳から天狗岳)渋の湯へ
3.交通手段 バス、タクシー
4.行動記録
1月9日(金) 22:00 東梅田から小渕沢(高速バス)〜美濃戸口(中央道小淵沢(5:43着)から美濃戸口までタクシー)6:30着
10(土)小雪(ガス)
(7:10発) 美濃戸口〜南沢〜行者小屋(11:10着 12:10発)〜地蔵尾根〜赤岳展望荘14:10着(泊)
11(日)曇り一時晴れ
7:30赤岳展望荘〜赤岳(8:40着 9:00発)〜-文三郎尾根〜行者小屋9:50〜赤岳鉱泉(10:20着 /10:45発)
〜赤岩の頭(12:35)〜硫黄岳山頂(13:00)〜夏沢峠13:50〜本沢温泉14:50(泊)
12(月)小雪
本沢温泉6:50〜ミドリ池分岐8:15〜中山峠10:15〜黒百合ヒュッテ11:00〜12:20渋の湯着 温泉
渋の湯14:57発 バス 茅野 16:00着 茅野 16:00発 高速バス 22:45 梅田着
5.山行中の問題・事故に繋がる要因
a)予定のルート・日程で行動出来たか 予定ルートをはずれた場合あるいは日程が異なった場合はその理由
12日は、本沢温泉から夏沢峠に登り、根石岳・天狗岳から渋の湯のルートを予定していたが、悪天候で強風が予想されラッセルの可能性もあるようだったので、小屋の客の情報などからミドリ池分岐から中山峠・渋の湯のルートに変更。
b)事故に繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す
特になし
c)パーティーで山行中の事故に繋がる要因について山行後検討したか
特になし
6.その他ルートに関する情報・気がついた事など
1.美濃戸口の八ヶ岳山荘は朝6時には既に開いており、食事なども可能であった。
2.今回は年末からの降雪がなく、前日の9日にまとまった降雪があり、湿度の高い雪であったため、
アイゼンが効かず、地蔵尾根のトラバース箇所で滑った。
また、雪のため先行者の足跡が消え、ルートが分かりにくかった。
3.地蔵尾根ルートで登る場合、展望荘から赤岳頂上間の強風には注意が必要。
4.赤岳展望荘は、非常に暖かかった。飲み物が宿泊者には無料(コーヒー・お茶・お湯)で快適だった。
また、湯たんぽは朝まで非常に暖かく、夜中の風に小屋はゆれていたが暖かかった。
自炊も暖かい談話室ででき、濡れた衣類などの乾燥も十分できた。
山岳会の割り引き制度を使うのを忘れたのが残念だった。
5.文三郎尾根は、地蔵尾根ルートに比べ風の心配はほとんどない。
アイゼントレをしていれば問題なく下れるルートであった。
6.赤石の頭から硫黄岳山頂からケルンに沿って夏沢峠に下るルートは、強風時は非常に注意が必要である。
特に硫黄岳頂上から夏沢峠まではルートも1時間程度あり、引き返す判断も難しいところである。
無理だと思ったら硫黄岳で引き返す判断をする必要である。
7.本沢温泉(露天風呂)からトレースが突然消えており、少し迷った。
露天風呂は冬は衣類も凍ってしまうので中々入りにくい。小屋から10分くらいのところにある。
小屋は赤岳展望荘に比べ非常に寒かった。温泉も一旦外にでて入らなければならず、時間割もあり、
宿泊客が多い場合風呂には5人ほどしか入れないので大変だった。
自炊は談話室で出来たので暖かかったが、食堂は寒かったようである。
(自炊で正解だった)水1L:100円。
8.ルート変更したミドリ池分岐から中山峠、渋の湯は樹林帯の中を歩くコースで、予定していたコースと時間も
ほぼ同じで歩くことができた。
夏沢峠から天狗岳への冬のルートについては今回歩けなかったのが残念だったが、次回リベンジしたい。
9.強風の中、予定していた冬の南・北八ヶ岳縦走ができたのは、トレーニングの成果であったと思う。
報告者 西 2009年1月18日
南八ヶ岳から北八つへ
この冬で入会して3年目になる。1年目は冬山教室で北八ツ、2年目は天狗岳に登った。今年も八ヶ岳に行きたいという誘いに、ハイキング部の女性3人が同行してくれることになった。1月の3連休に行くことになり、Nさんがリーダーを引き受けてくれる。
Nさんの計画は、1日目美濃戸口から赤岳天望荘泊、2日目は赤岳〜行者小屋〜赤岳鉱泉〜硫黄岳〜夏沢峠〜本沢温泉泊、3日目夏沢峠〜天狗岳〜中山峠〜渋温泉、八ヶ岳の南と北を結ぶコースだ。ちょっと私たち初心者にはハードルの高い計画だ。トレーニング計画を立ててくれ、アイゼントレーニングを始めた。ところが12月末になって2人が参加できなくなってしまう。「2人だけど、どうしますか?」とNさん。「車で行けないので、バスで行きましょう」と私。迷うことは無かった。ところが山行前日、2つ玉低気圧が日本を通過し、3連休はこの冬一番の寒波がきて、大荒れになるという天気予報だ。なんか神様に「お前はそんなに、危険な冬山に行きたいのか?」と聞かれているような気がした。
「山は逃げない、またいつでも行ける」と行けなくなった友には言う。しかし人生の半分とっくに過ぎた私にとって、山は1年1年遠くなる。体力の減退、体の故障、親の介護、いつ行けなくなるかわからない。Nさんが一緒に行ってくれるこのチャンスに絶対に行きたいと思った。
9日(金) いつも車で行っており、バスで行くのは初めて、ワクワクしながら家を出る。大阪午後10時発甲府行き夜行バスに乗る。3列シートでゆったりしている。京都に立ち寄る頃には爆睡していた。午前5時30分小淵沢高速バス停に降りたのは、私たち2人と単独の女性の3人だけだった。うっすらと雪の積もった真っ暗な高速道路、なんとも淋しいものだ。5分ほどしたらNさんが頼んでいたタクシーが迎えに来てくれて、ホッとする。
10日(土) 美濃戸口に近づくと雪が強く降ってきた。荒れるのかな〜。気分が沈む。早朝だったが、八ヶ岳山荘が開いていて、中で準備をする。朝定食やうどんもある。コンビニで弁当を買ってきたが、ここで温かいものを食べればよかった。準備をしているうちに夜も明ける。午前7時ごろ小雪の中出発する。美濃戸までは新雪の林道を歩く。数台の車が追い越していく。この雪道なら夏より走りやすそうだ。
美濃戸から南沢を登る。トレースがしっかりついて歩きやすい。シラビソに雪が積もって北八ツの雰囲気、時々晴れ間も見えて、だんだんうれしくなってくる。天気に一喜一憂だ。2〜3組に追い抜かれるが、人は少ない。
11時行者小屋に到着。まだテントは1張もない。思ったほど風がないので地蔵尾根を登ることにする。雪が降りガスって山は見えない。防寒対策、服を重ね着して、手袋を替え、アイゼンをつける。12時登り始めるがいきなり急登だ。クサリ場、雪がやわらかくアイゼンが効かず、足がずるずる落ちる。Nさんを見ると、片足が落ちる前に次の足を出して、つま先でガンガン登っている。まねをしようと思ったが、ちょっと登っただけで息切れしてしまった。運良くNさんのアイゼンの紐が緩んで締め直ししている間に、お湯など飲んで息を整える。その後も急登が続く。Nさんに置いていかれないよう必死、四つんばいになって登る。2組ほど抜かれて私たちが最後尾になった。雪と風で人が登った跡は消えていたが、クサリのある夏道をたどった。最後のクサリ場左へトラバースするところで、西さんが滑ったが3mほどですぐに滑落停止して止まった。ホッとする。それからも急登が続き、お地蔵様がある稜線にでた。「小屋はもうすぐだよ」Nさん。強風や吹き溜まりに足を取られ、やっと午後2時天望荘に到着する。大部屋は寒いからと二人用の個室に案内してくれた。食堂にはコタツがあって、ぜんざいをサービスしてくる。天国のようだ。宿泊客は10人ぐらいで、ほとんどが明日は横岳から硫黄岳に行くという。横岳経由で行くとずいぶん時間短縮になる。Nさんもチョット迷ったようだが、「基本計画書どおり行動する」ということで、予定通り赤岳鉱泉まで下りて、登り返すことにする。
夕食は暖かい談話室で自炊させてもらう。今日の夕食は、かす汁は、お湯を入れればいいように作ってきた。天望荘はお湯、コーヒー、お茶飲み放題、自炊にはとてもありがたい。夕食後、湯たんぽが配られた。外は強風が吹き荒れていたが、湯たんぽは朝まで暖かくぐっすり寝ることができた。
11日(日) 4時半起床6時出発して日の出を赤岳山頂で見る予定で、起きて準備したが、外はガスと強風、視界も悪いので、出発は夜が明けてからにする。準備に少々手間取って7時30分小屋を出発する。それでも私たちが一番の出発で先行者がいない。Nさんはルートを選びながらガンガン登っていく。私はどうしても遅れ気味になる。高度のせいか息切れも激しい。明るくなり、少しずつ青空も広がってくると、不思議と力が湧いてくる。8時40分赤岳山頂、−20度強風。北アルプスは雪雲に隠れていたが、南アルプスや富士山、北八ツ方面が雲の切れ目から望めた。真っ青な青空も広がり山頂で20分ほど展望を楽しんだ。
9時下山を始めると文三郎尾根から続々と人が登ってきた。展望のいい樹氷のきれいな尾根だ。人を避けたり追い越したりしながらガンガン下る。登りは遅いが下りは速い。アイゼントレーニングの成果だ。
9時50分行者小屋、今日はたくさんテントが並んでいる。Oさんたち3人がテントを張っているはずだがどれか分からなかった。10時20分赤岳鉱泉、ここで大休止してパンを食べる。調理パンは水分が多いのか凍っていた。これからまた硫黄岳へ登り返す。道はしっかり踏まれていて歩きやすい。赤岩の頭の手前、天望荘で一緒だった横岳経由のカップルとすれ違う。「硫黄岳は風が強かったけど、横岳は全然大丈夫でしたよ。」と言うが、女性はハーネスをつけてザイルで結ばれていた。「ちゃんと保険はかけているじゃん!」
保険のない私たちは危険を避けて体力勝負するしかありません。
12時35赤岩の頭、ここから突如風が強くなる。岩場でルートを迷うところらしいが、人が下りてきたおかげで迷わず硫黄岳に着いた。13時山頂はあいにくガスって何も見えなかった。山頂標識前も素通り、大きなケルンに沿って下りて行く。吹きさらしの大きな尾根で風に飛ばされそうだ。耐風姿勢をとるが、風が弱まる時がない。いつまでも耐風姿勢をとっていても進めないので歩き出す。14時夏沢峠手前の樹林帯に入ってやっと風が弱まった。峠からはトレースのあるジグザグの道を下って行く。硫黄岳から本沢温泉まで、会ったのは単独の男性1人だけだった。夏沢峠から50分ほど下ると河原の雪の中に白濁した野天風呂が見えた。「誰も入ってないから、今なら入れるよ。」「う〜ん、あの雪の中で裸になる勇気はないわ。」Nさんはこの野天風呂に入るのを楽しみにしていたようだが、冬は脱いだ服が凍ってしまうので、入る人はあまりいないらしい。ここでなぜかトレースが無くなり、また戻ったりして小屋を探すのに10分ほど迷ってしまう。この露天風呂から5分ほど下ったところに本沢温泉の建物があった。午後3時本沢温泉の小屋に着いた。
大きな小屋だが、20人ほどの団体さんが来ていて、お風呂は交代でゆっくりは入れなかった。でもお湯は有馬の金泉のような色をしていて、体はとても温まった。ここも自炊は薪ストーブのある談話をつかわしてくれた。今日は簡単にレトルトカレーだが、風呂上りのビールが格別においしかった。2日間予定通り歩くことができて、今日は二人とも大満足だった。
12日(月) 午前7時準備して外に出ると雪が降っている。出かける前の天気予報では、今日一番お天気がいいはずだったのだが… 山はすっかり雪雲におおわれている。風雪では稜線は厳しい。同室のカップルが歩いたというミドリ湖方面から中山峠に出るルートに変更を検討する。Nさんは迷っていたようだが、迂回することを私が強く主張した。天狗岳手前の痩せ尾根は、この天候では危険だと思った。あえて風雪の稜線を歩くこともない。小屋の前でかなり迷った末、夏沢峠とは反対の方に歩き出す。10分ほど林道を下りて、中山峠への道に入る。ふかふかの雪、最初は北八ツのスノーハイクという感じ、気持ちよく歩いていたが、ミドリ湖への分岐を過ぎると、傾斜がきつくなる。アイゼンをつけるが、雪がやわらかくてアイゼンが効かない。Nさん「踵に体重が残るからずり落ちる。蹴り込んだらつま先に体重をかけたまま登るように」とアドバイスしてくれるが、分かっていてもなかなかできない。筋力の違いか?
10時30分ヒイヒイ、ゼイゼイ、やっと中山峠に着いた。荷物を置いて天狗岳の方に行ってみる。5分ほど登って稜線にでるが、雪と強風が吹きつけ、ガスって何も見えない。諦めて戻る。小雪の中黒百合ヒュッテの前を通り、さっさと下山する。
12時20分渋の湯下山、バスは2時55分それまで、ゆっくり温泉につかってバスを待つ。1時間半も温泉に浸かったおかげで、すっかり疲れがとれた。帰り高速が渋滞して、家に着いたのは12時を過ぎていたが、体は軽く気分もルンルンだった。
今回の山行では、最初の予定通り美濃戸から渋の湯まで、厳冬の八ヶ岳南と北を結ぶルートを歩くことができ、今までにない大きな達成感、充実感を得ることができました。
これは女性2人だけで歩けたというのも大きかったと思います。ペースの遅い私に合わせて歩いてくれたNさん、弱気な私を引っ張ってくれたNさん、本当にありがとうございました。今回歩けなかった夏沢峠〜天狗岳〜中山峠、また一緒にリベンジしてください。
玉田優子
冬の八ヶ岳、強風を満喫!
冬の八ヶ岳・・・・ここ数年は南八ヶ岳を中心に登ってきた。
去年は赤岳から硫黄岳に抜けたいと企画したが、強風のため赤岳・阿弥陀岳のピストンに変更した。
今年は、南八ヶ岳から北八ヶ岳を縦走したいと企画した。岩稜の南八ヶ岳とスノーハイクが似合う真っ白な雪をまとった北八ヶ岳、どっちの八ヶ岳も楽しみたいと、本当に欲張りな企画である。
冬の山は、お天気に大きく左右される。予定通りいけるとは限らない。それでも「予定通り歩きたい」と思い、出発した。
2日目は、強風だった。赤岳展望荘から赤岳の風はすごかった。バランスをくずしたら落ちるな!と恐怖を感じた。赤岳頂上からは一瞬のパノラマ風景と青空が見れよかった。文三郎尾根はトレーニングの効果もあり楽勝。たのしく雪を楽しみながら赤岳鉱泉まで歩けた。硫黄岳から夏沢峠もすごい強風だった。しばらく耐風姿勢をとったりしていたが、風の止む時はなく、仕方なくヨタヨタしながら歩いた。Tさんは結構スタスタ風の中を下っていった。(すごい!!)
なんとか無事夏沢峠まで降りると、風はうそのように消えた。2日目の宿、本沢温泉に到着。
3日目も、残念ながら雪、天狗岳は諦め樹林帯コースを歩くことに変更し、渋の湯に下山。
3日間、朝から夕方まで本当によく頑張って歩いたと思う。年末・年始のトレーニングや計画・調整など、ちょっと大変だったけど、とても充実した満足のいく山行だった。一緒にトレーニングをし、山にいける仲間がいるってすばらしい!!と思う。いろいろご心配いただいた方、協力いただいた方、有り難うございました。
ステップアップできた山行でした。こんな山行を積み重ねていきたいと思います。
西