山行報告書

神戸勤労者山岳会

1参加者
 中原・大石

2山域・ルート
 明星山P6南壁 フリースピリッツ

3交通手段
 車

4行動記録
 <入山日2009年10月29日 下山日2009年11月1日>
  ■第1日
 20:00神戸発 − 2:30 ひすい峡キャンプ場泊
 ■第2日
 7:00取り付き − 11:20 中央バンド − 14:00 終了点(先行パーティーの待ち時間40分あり) − 16:00 対岸展望台うらい − 高浪ノ池キャンプ場泊
 ■第3日
 キャンプ場 − 13:00 富山登山研究所(全国救助隊交流会参加
 ■第4日
 昼まで交流会参加し帰神

5山行中の問題点・事故に繋がる要因
 a 予定のルート・日程で行動出来たか 予定ルートをはずれた場合あるいは日程が異なった場合はその理由
    予定通り
 b 事故に繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す
    なし
 c パーティーで山行中の事故に繋がる要因について山行後検討したか
      なし

6その他ルートに関する情報・気がついた事など

報告者氏名 大石貴子 2009年11月5日

 
 P6南壁をバックに

 

明星山フリースピリッツクライミング報告

大石貴子

今回、富山登山研究所で行われた全国救助隊交流会に抱き合わせて、明星山でクライミングをする計画だった。 他に救助隊のメンバー5名と共に3ルート(左岩稜3名、クイーンズ・ウェイ2名)を登った。私にとっては初めて明星山だ。 岩壁の対岸の車道に展望台があり、登っているクライマーを見物することが出来る。その展望台の横から小滝川の河原に降り、対岸に渡渉し、 少し下流へ行った所から取り付く。アプローチが短く、とても楽。フリースピリッツは、オールフリーで登るルートで、岩の弱点を付いて右に左にトラバースがあり、 ルートファインディングが難しいルート。中原さんは一昨年、増田さん、他1名と3人ですでに登られているルートなので心強かったが、つるべで登るので、 私のピッチでルートを間違えてしまわないようにしなければと緊張した。ザックは2人の荷物を1つにし、セカンドが背負って登ることに。偶数ピッチを行くか、 奇数にするか悩んでいたが、 「奇数ピッチも偶数ピッチもグレード的にはあんまりかわらへんで。」 と言われ、取り付きに来て、とり合えず最初のピッチは私が行かせて頂くことにした。 「後は、なるようになれだ。」 で、奇数ピッチは大石がリード、偶数ピッチを中原さんがリードに。

●1ピッチ目 V 45m 草つきのバンド上を左上。草つきの足元はすべるし、石灰岩の岩に慣れていないため足裏のフリクションの感覚がつかめないこと、 そして1ピッチ目で体も動きがぎこちなく、結構嫌だった。
●2ピッチ目 W− 20m 小垂壁を越え、さらに左にトラバース。
●3ピッチ目 X 30m スラブから凹角をクラック沿いに登る。 カムが有効。キャメロット#3まで使った。
●4ピッチ目 W− 30m 凹角からスラブを下りトラバースする(短い)。その後、バンドを右上する。
●5ピッチ目 X 20m ハングの下のスラブをうめぼし岩下目指してトラバース。ホールドは大きく安心。 ビレー点は足元が不安定で、支点に体重を掛けてビレーする。6ピッチ目まで繋げて行くパーティーもあるようだが、 先の凹角が急だったのと、下りトラバースが不安だったため、根性の無い私はここで切った。
 
 うめぼし岩の通過
●6ピッチ目 X+ 15m でも、フォローでザックを担いで急な凹角を登るのはきつかった。さらにうめぼし岩のトラバースでは、 1本のザイルがうめぼし岩の上から、もう1本のザイルが下から右に引っ張られていたため、バランスが取りにくく、 ヌンチャクは掴むはテンション掛けるはでメチャクチャだった。ここで、すぐ後ろに後続パーティーが追いついてきた。 後続パーティーはお客さんを連れたガイドパーティーで、長いザイル(70m?)を使い、6ピッチ目の終了点の私たちの横を追い越し、 5ピッチから7ピッチを一気に登っていった。しかし、ハング越えやトラバースなど複雑なピッチの上、距離があるため声が届かず、 フォローで登る女性の要求がリードに伝わらず、フォローが登るのに時間がかかり、結局私たちは長い間そこで待たされることになった。
●7ピッチ目 X+ 35m カンテ左の垂壁の凹角から右のカンテを越えていく。ランニングはカムで取りながら登る。易しいフェースに出て直上。
●8ピッチ目 W+ 40m ハングの切れ目の凹角を越えスラブを直上。
●9ピッチ目 X 30m 被った凹角からハングを右側から越え、中央バンドに向かい緩傾斜帯を行く。
●10ピッチ目 W 20m 中央バンドのガレ場を石を落とさないように慎重に渡る。ガレ場から一段上がった11ピッチ目のビレー点は 先行パーティーが使っていたので、 下のブッシュで切る。そこにクイーンズウェイのルートから落石あり。足元の40cmくらいの岩が崩れたようだ。落ちながら岩にぶつかり粉々になって、 放射状に散りながら落ちてきた。幸い私たちや他のパーティーにも当たらず、よかった。明星山は浮石が多く、先行パーティーがいる時には落石に十分に注意が必要。 ビレーポイントにしていたところは危険なので、先行パーティーが登って行ったら、すぐにバンドの上部に移動した。
●11ピッチ目 W 50m 右上している階段状の凹角を黒い垂壁目指して登る。
●12ピッチ目 X 35m 垂壁の左、への字ハングの右のカンテを越えてクラック、バンドを右上。
●13ピッチ目 W 30m 凹角を抜け、鷹ノ巣ハング下のパノラマバンドを左にハンドトラバースする。足元が切れ落ちているが、 ホールドがしっかりしているので快適だった。
●14ピッチ目 Y− 40m 上部の核心部。つるべならここは中原さんのピッチであったが、今回始めて登る私にリードを譲ってくださった。 「残置がよーけあるから大丈夫や。頑張りィ。」と励まされ、ハーケンが数本あるビレー点から凹上のスラブを登る。 焦らないように、ホールド・スタンスを確実に拾いながら登った。右にカンテを越えて草付きの緩傾斜面に出て、ビレー点へ。
●15ピッチ目 W 40m 直上して大きな木のところから左上。大岩が重なっている方をめがけて登っていく。
●16ピッチ目 V 20m 大岩の間を抜けるとしっかりとした踏み跡があり南山稜に出る。安定したところでザイルを解き、 そこから西面に向かってトラバース気味に下降する。河原に出て渡渉し、斜面を登り返して車道に出る。

メンバーが迎えに来てくれていて、車で高浪ノ池のキャンプ場に移動する。3パーティとも無事登攀を終えたことを祝い、握手を交わし乾杯する。 6ピッチ目ではフォローでも恐ろしくて、情けないことになり、中原さんに 「もう帰るって言いだすんちゃうかと思ったワ。顔色無かったデ。」 と言われたが、でも何とかつるべで無事に登れて、ホッとした。16ピッチの長いルートであったが、変化にとんでいて、飽きさせられることなく終了点に着いた。 登攀中、時間があっと言う間に過ぎて行った。