山行報告書

神戸勤労者山岳会

1.参加者

大川、島田、生田、西、西尾、宮島、中村、松井

2.山域・ルート

八ヶ岳/阿弥陀岳南稜

3.交通手段
 

4.行動記録

<入山日2012年3月3日 下山日2012年3月4日>            
3月2日(金) 21:00神戸発→翌2:00中央道原PA着(仮眠)
3月3日(土) 6:30中央道原PA→7:30舟山十字路出発→立場山→青ナギ→13:00無名峰とP1のコル  テント泊(行動5時間30分             
3月4日(日) 3:00起床→5:00無名峰とP1のコル出発→南稜P3→9:10阿弥陀岳→御小屋尾根→13:00 舟山十字路 入浴後 帰神20:00             

5.山行中の問題点・事故に繋がる要因
a. 予定のルート・日程で行動出来たか 予定ルートをはずれた場合あるいは日程が異なった場合はその理由
・ほぼ予定通り行動できた。
b. 事故に繋がりそうな要因(ヒヤリハット)が発生したか 発生した場合は具体的に記す
・特になし
c. 山行の問題点、今回の教訓

・幸い天候良く、トレースもあり、また事前のトレーニングと打合せが功を奏し、スムーズに進めた。今回のメンバーは全員よく事前トレーニング(自主トレも含め)し、レベルが上がっていた。

・阿弥陀南稜核心部のP3を抜けるルンゼでは、1ピッチ目の確保のための支点が深い雪に埋まっており、前回以上に苦労してやっと掘り出してから使用した。
1ピッチ目約30m地点の露出した岩にリングボルトを、前回同様中間支点として使用した。45m地点の斜面に、スノーバー2本とピッケルを打ち込み、1ピッチ目を切った。
前回の反省から、今回は比較的雪の深そうな地点を選んだことと、前日手順をトレーニングしていたことが効果を発揮し、スムーズに強固な支点が構築できた。
2ピッチ目はルンゼ沿いに登ったが、前回発見した左手の岩の残置リングボルトは岩に氷が付いていたため見つからず、中間支点として利用できず、
やむなく氷化した斜面を慎重に右に回り込み、13mほど先にあった立木に中間支点をとった。ここが今回の核心部であった。
最終1ピッチ終了点から約45m地点の立木を支点にした。以上で2ピッチに固定ザイルを設置して、8名無事通過できた。

・P3の取り付地点で設置してあったワイヤーを登攀待ちメンバーの自己ビレイの支点にしたが、最初にワイヤーに繋げたカラビナを環付カラビナにしていなかった。
 今後ザイルやシュリンゲが干渉し易い支点で、カラビナが外れると致命的になる場合は、必ず環付カラビナにする必要がある。

・P3通過の時、オーバー手袋での作業等が難しく、クイックドロー1個、タイブロック1個を落としたが、幸い回収できた。
 冬季用の装備で確実な作業ができるようさらにトレーニングと装備の工夫が必要。

・今回フリクションノットの代わりの、タイブロック等を使用したメンバーが数名いたが、両手がフリーとなり、有効であった。
 今後アルパインクライミング等で持参したほうが良いと思う。

・P3ではそれぞれの終了点からの声を聞こえないと予想して持参した3台の無線機が効果を発揮した。
 無線による連絡は、現在なにが行なわれているかメンバー全員が共有でき、安心感が高まる

・ルートで他に注意を要する地点は、P4を左から巻くトラバース。右の岩がかぶりぎみの細いバンドを慎重に抜ける必要がある。滑落すれば致命的。右手の岩にはよく見るとガバがある。場所によってはオーバー手袋を脱いだほうが安全。今回は雪が多く、バンドに斜めに雪が付いていたため、安全のため、岩にシュリンゲをかけ支点として、ザイルを張った。

・最後のP5通過の際、右側に5mトラバースし雪壁を登るところも注意が必要。今回はトレースがあったが、氷化すると難易度が増す。

・その他にも落ちたら致命的なトラバースが頻繁にあり、確実なアイゼンワークが必要。

・阿弥陀岳御小屋尾根の下りは数箇所後ろ向きでの下降が必要。足元の安全を確認しながら慎重に降りる必要有。ザイルまでは必要なかった。

・天候については、長野南部地方(土)晴れ、(日)午前晴れ、午後崩れるとの予報で、若干の心配もあったが、現地の天候は、予報通りであった。両日とも風がほとんどなく、特にP3での待機中は、寒さを余り感じなかったほどであった。非常に幸運であった。  なお、下山中に雲に覆われ始め、天気予報の精度の高さに感心した。

6.参加者の感想

◆トレーニングを重ねてきたが、百聞は一見にしかずで、いい実体験ができた。

◆昨年は中止で、これまでトレーニングを行ってきたが、今回の山行で自分の課題が見えてきた。

◆今回の参加は不安であったが、皆さんのフォローでなんとかクリアーできたと感謝しています。頑張ります。

◆体力不足を感じた。今後もトレーニングに励みたい。

◆8名という大人数での南陵。心配もあったが、今回の成果は、大川リーダーの緻密な事前トレーニングメニューのお蔭。今後は、この山行を新しい会員に伝えることが、参加者の課題でもある。

(大川感想) 本山行は去年実施予定であったが、東日本大震災の直後であったため中止。今年改めて企画したが、去年参加予定の大半のメンバーと今年参加のメンバー合わせて8名もの参加となった。
今回の山行について、参加メンバーに喜んでもらい、私自身たいへんうれしく、やりがいを感じた。また、冬季登攀のシステムやザイルワークを改めて実体験できてよかった。
今後もまた、新しいチャレンジをしたい。

  
テン場から見た阿弥陀南稜の岩稜 P4のトラーバース直前から見た南稜と富士山
P4のトラバースのザイルワーク

報告者

大川  2012年3月5日