残り高度差450mで敗退

北口 記

積雪期この山域に通い始めて4年になる。雪が降り始めると瞬く間に数メートルの積雪になるとは聞いていたが実感はない。

今冬はこの山域でも年末までほとんど雪が降っておらず、根雪ができていないと想像はしていた。根雪が無いので夏道通しに取り付くか当初の計画どうり尾根通しに取り付くか迷った。数日前からの新雪と昨夜来の雪で取り付き付近で積雪は膝上ぐらいだ。雪が安定していないのでブッシュに足を取られるかもしれないが尾根ルートを取ることにした。弱層テストで雪は全く層を形成していない。急斜面では新雪雪崩の危険がある。圧雪されていないのでブッシュの空間や倒木の空間が雪で埋め尽くされていない。ラッセルは困難を極めると予測された。
約600mの取り付きから徐々に高度を稼ぐ。しかし2時間で高度150m稼ぐのみである。次第にラッセルが大腿、胸と深くなる。胸まで来るとザックを担いだままのラッセルでは膝が上がらない。空身でのラッセルになる。何度も雪を踏み抜きワカンがブッシュや倒木の空間にとられ抜き出せない。体力が消耗する。1600m付近までの予定であったがメンバーの疲労度等を勘案し1400m付近をテン場にした。夜間も雪が断続的に降り続く。

9日最小限の荷物で頂上に向かう。斜度が増すにつれラッセルが胸から顔面の高さになる。雪をピッケルやストックで落とし、膝で押さえ、足で踏み固めるが雪は足下から空気のように抜け去る。その上に更に雪を落とし込み踏み固める。1時間、2時間、3時間ラッセルを続けるが稼いだ高度は120-130mほど。残り450m。敗退を決めた。

白山系の積雪・雪質は侮れない。あのまま更に突っ込んでいれば下山は困難を極めたであろう。新雪の山は美しい。その美しさの裏には魔性が潜んでいる事を改めて感じさせられた。

メンバーのコメントはこちら

1)行動記録:

2005年1月7日(金) 

時間

場所

説明

20:30

西宮

阪神−名神−東海北陸:荘川IC−R156、  東海北陸道及びR156は積雪および一部凍結。 

00:30

平瀬発電所

 

 

2005年1月8日(土) 曇り時々晴れ、風なし(行動8時間、登り775m)

時間

高度

説明

4:30

平瀬変電所前の駐車スペースにテントを張って仮眠したが、R156のすぐ横であったためラッセル車の騒音等で安眠は出来なかった。 起床後、それぞれ朝食を取り、出発準備する。

6:30

600m

出発。 変電所の北側より入り、西に伸びる尾根の取り付きを目指す。 取り付き点には送電線の支柱がある。 膝下のラッセル。 途中、見事な猿の腰掛を見つける。

8:30

850m

膝上のラッセル。 ワカンをつける。 暖冬の影響なのか根雪が締まっておらず、雪を踏むとずぶずぶと沈んでしまい、時にはブッシュの空間を踏み抜いてしまう。 冬型の気圧配置であったが時折、晴れ間が見える。

9:30

950m

緩やかな尾根。 庄川の対岸、北東方向に真っ白な斜面が見える。 室町か戦国時代の地震により崩れた斜面だそうだ。 金貨が埋まっているとの話もあるらしい。

10:30

1100m

夏道合流地点付近と思われる。 

11:30

1250m

腰上のラッセル。 雪が湿り気味で重い。

14:30

1375m

三角点付近で傾斜が緩やか。 1600m地点幕営の予定であったが、寝不足の中のラッセルである為、暗くなる前に到着する事は困難と北口リーダーが判断。 ここで幕営する事にする。 

18:30

夕食後 就寝 

 

2005年1月9日(日) 雪、微風(行動7時間、登り135m、下り910m)

時間

高度

説明

4:30

起床。 夜間、テントをたたくような少々強めの雪が降っていた。

7:00

1375m

朝食後、出発。 雪は弱くなったが、降り続く。 テントはそのまま置いて行く。

8:15

1425m

膝上から胸上のラッセル。 腕、膝、足の裏の3ステップで雪を踏みすすむ。

9:55

1510m

登り終了、下山開始。 ラッセルがきつくその日のうちに山頂往復は困難、また積雪の状態が不安定な為、雪稜縦走は困難と判断された。

11:15

1375m

幕営地点。 トレースは残っていた。 

11:50

1375m

後片付けの後、下山。 1000m付近より先は昨日のトレースが見えない。 

14:00

600m

平瀬変電所前の駐車場着。

 

時間

場所

説明

15:00

平瀬変電所

途中、ひるがの高原の温泉で汗を流し夕食を取る。R156−高鷲IC−東海北陸−名神−阪神、高鷲ICより10kmほど渋滞。 スキーの帰り渋滞と思われる。

23:00

西宮

 

 コメント